【検証】サル痘、ネットで広まる「無知なうわさ」
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【6月10日 AFP】世界各国で1か月前から感染者が相次いでいるウイルス感染症「サル痘」について、インターネット上では誤った情報が拡散しており、その多くは新型コロナウイルスをめぐる陰謀論に類似している。AFPのファクトチェックチームは、そのうち3件の誤情報を検証した。
■「コロナワクチンの副反応」は誤り
世界各国のSNSでは、最近のサル痘感染例が英アストラゼネカ(AstraZeneca)製新型ウイルスワクチンの「副反応」だという誤った情報が広まっている。これは、同社製ワクチンがチンパンジーアデノウイルスを遺伝情報のベクター(運び手)として使用していることに関連しているとみられる。
だが、医療専門家はAFPに対し、サル痘を引き起こすのはアデノウイルスではなくポックスウイルスの一種であることなどから、この主張は事実無根だと説明した。
韓国・嘉泉大学(Gachon University)の感染症専門家オム・ジョンシク(Eom Jung-shik)教授は、「ワクチンがヒトの体内で新しいウイルスを生成し、サル痘などを引き起こすことはあり得ない」と指摘。韓国カトリック大学(Catholic University of Korea)の疫学者ユ・ジンホン(Yoo Jin-hong)教授も、このデマは「チンパンジーを広くサルと呼ぶことに基づいているようだが、事実無根で非常に無知なうわさだ」と一蹴した。
サル痘は1958年、研究に使われていたマカク属のサルから発見されたことにちなみ命名されたが、他の動物にも感染する。世界保健機関(WHO)によると、サル痘の自然宿主はげっ歯類である可能性が高い。
■「ファイザーがサル痘ワクチン製造」は誤り
SNSでは、米食品医薬品局(FDA)が最近、米ファイザー(Pfizer)製の新たなサル痘ワクチンを承認したとの投稿が広まっているが、これも誤りだ。
米国内で唯一利用可能なサル痘ワクチンはデンマークの製薬企業ババリアン・ノルディック(Bavarian Nordic)製で、2019年に承認された。ファイザーはAFPに対し、同社製のサル痘ワクチンは存在しないと説明した。
■「帯状疱疹を誤認」は誤り
SNSでは、カナダのCTVニュース(CTV News)の記事とされる画像が投稿され、同国の当局が調査したサル痘感染例の95%が実は帯状疱疹(ほうしん)だったとの情報が広まっている。
しかし、CTVニュースの親会社ベル・メディア(Bell Media)の広報担当はAFPに対し、画像に写っている記事はCTVニュースのものではなく、同局が「そのような記事を掲載したことはない」と説明した。
AFPの取材に応じたトロント大学(University of Toronto)医学部のアイザック・ボゴシュ(Isaac Bogoch)教授によると、サル痘と帯状疱疹は症状が類似する場合もあるが、原因となるウイルスはそれぞれ異なり、「全く別の感染症」だという。(c)AFP/Julie CHARPENTRAT