■戦争犯罪

 マクロン氏の発言により、ウクライナ、東欧諸国および米英側とフランス側との間で、紛争の捉え方に相違があることが浮き彫りになっている。ウクライナやその支援国は、国家や民主主義の存亡を懸けた戦いと判断し、ロシアの敗北によってのみ解決できると見なしている。

 一方、フランスとドイツは戦闘終結に向け、ウクライナが領土に関して譲歩すべきだと考えているのではないかとの懸念が一部で指摘されている。ただ、両国はこのような主張を裏付ける発言を行っていない。

 エストニアのマルコ・ミフケルソン(Marko Mihkelson)国会外交委員長はフェイスブック(Facebook)に、「仏大統領は戦争犯罪者のプーチンに屈辱を与えない手だてをいまだに探っている」と投稿。片脚を失った少女の写真を添え、「マクロン氏はウクライナのこの少女にどう説明するつもりなのか」と畳み掛けた。

 プーチン氏を弱体化させ、ウクライナからロシアを撤退させるとの目標を政府が掲げる米英両国では、マクロン氏の発言に対し理解不能だとの反応が相次いだ。

 マイケル・マクフォール(Michael McFaul)元駐ロシア米大使は5日、「プーチン氏は屈辱を受けるかどうかにかかわらず、彼の軍隊が進軍できなくなった時に初めて交渉に臨むだろう」と指摘した。

 英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)のジョン・チップマン(John Chipman)所長はツイッター(Twitter)に、プーチン氏の体面を保たせようとするのは「弱腰外交における目標だ。プーチン氏の体面は本人が責任を持てばいい」と投稿。さらに「屈辱というのは、戦争犯罪に対しては穏やかな懲罰だ」と書いた。