【6月7日 東方新報】中国で子どもの近視の割合が増えるのに伴い、「近視が治る」という触れ込みの製品が出回っている。漢方薬にはり・きゅう、青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)サプリ、少数民族の「秘薬」、マッサージ器、近視矯正装置、特製点眼薬、耳や足のツボ押し、ホットアイマスク、ブルーライトカットグラス…。インターネット上にはさまざまな商品やサービスがあふれ、「これで私はメガネとおさらばしました」という体験談も紹介されている。

 国家衛生健康委員会によると、中国の児童・青少年の近視率は2020年で52.7%と半数を超えている。学校別では小学生が35.6%、中学生が71.1%、高校生が80.5%に上る。

 さらに2020年からコロナ禍が広がって以降、ステイホームを余儀なくされた子どもたちはオンラインで授業を受け、外出して遊ぶ代わりにスマホゲームをする時間が増えていることから、さらに近視になりやすい環境となっている。そこで心配する保護者の一部が「近視が治る」製品に飛び付いてしまっている。

 だが、天津医科大学(Tianjin Medical University)眼科医院の魏瑞華(Wei Ruihua)主任医師は「こうした製品で近視が治るという根拠は全く無い」と断言する。一部の製品は神経や筋肉を弛緩させることで眼精疲労を和らげる一定の効果は考えられるが、近視自体にはなんら効果がないという。魏氏は「20分間本を読んだ後、20フィート(約6メートル)離れた場所を20秒見る『20-20-20』習慣を身に着け、屋外を毎日散歩するといった生活スタイルをする方が、近視の促進を抑える効果がある」と話す。

 中国消費者協会も5月下旬、「『近視が治る』という製品に科学的根拠はない。宣伝をうのみにしないように」とウェブサイトで表明した。こうした製品を製造・販売する会社はほとんどが零細業者で、製品には生産日、品質証明、生産者が表示されていない「三無製品」も多い。

 中国では「智商税(IQ税)」という言葉が最近定着しており、意味としては「社会勉強代」、つまり「知識不足による無駄遣い」を指す。中国メディアは「『近視が治る』と宣伝する製品を買うことはIQ税を払うだけだ」と警告している。(c)東方新報/AFPBB News