【6月6日 AFP】5日に行われた2022年サッカーW杯カタール大会(2022 World Cup)欧州予選のプレーオフ決勝で、ウクライナは0-1でウェールズに惜敗し、W杯でプレーする姿を戦争に苦しむ国民に届けるという夢は絶たれた。それでも敵地へ駆けつけ、青と黄の国旗色をまとった数少ないファンは、頭を下げる選手を英雄として扱い、敬意を表した。

 44歳のサポーター、イーホル・マカレンコ(Igor Makarenko)さんはAFPに対して「W杯に出場できていれば、国民の魂は燃え上がっただろう。ロシアが打ち砕こうとしている魂だ」と話した。

 職人だというマカレンコさんは、家族とともにウクライナを離れて英ロンドンへ移り、そこから母国を支援している。国へ戻って参戦するべきかとも考えたが、結局は英国に残り、欧州各国へ避難してくる同胞、またベラルーシとの国境沿いに住む親族に日用品を届ける手伝いをしている。

 マカレンコさんは「兄弟3人は前戦にいる」と続け、「自分も戻って戦うべきかと尋ねたら、残ってお金と火炎瓶の燃料を送ってくれた方が助かると言われた」と明かした。

 スタジアムが1958年以来のW杯出場をもぎ取った歓喜に沸く中で、ギャレス・ベイル(Gareth Bale)を中心としたウェールズの選手は、拍手でウクライナのサポーターとチームをたたえた。

 ウェールズ代表のロバート・ページ(Robert Page)監督は、「今起こっていることはわれわれもよく承知しているし、とにかく気持ちを示したかった」とコメント。「彼らのここまでの道のりは、大いに称賛に値する。そのことへの敬意を示したかった」と話した。

 ウクライナの選手が通路の先へ消え、前戦で戦う兵士から送られてきた国旗を飾った控室に戻った後、ウェールズの選手と観客は一緒にフォークソング「Yma o Hyd(今もここにいる)」を歌った。

 侵攻開始から100日がたつ中、ウクライナの選手はピッチで誇り高くプレーし、国民にある種の日常を届けた。

 ウクライナ代表のオレクサンドル・ペトラコフ(Oleksandr Petrakov)監督は「ウクライナ中が戦火に見舞われ、女性と子どもが日々命を落とし、インフラは野蛮なロシア人に破壊された」と話し、「ロシアはわれわれを痛めつけようとし、こちらは抵抗している。とにかく支援がほしいし、われわれの母国で起こっていることを理解してもらいたい」と訴えた。(c)AFP/Kieran CANNING