【6月3日 AFP】米ニューヨークの検察はこのほど、仏パリのルーブル美術館(Louvre Museum)前館長が関与したとされる略奪品の売買に関連し、メトロポリタン美術館(Metropolitan Museum of Art)に収蔵されている古代エジプトの遺物5点を押収した。

 マンハッタン(Manhattan)区検事局は、押収された5点の価値は300万ドル(約3億9000万円)に上るとしている。出エジプト記(Book of Exodus)の場面を描いた紀元前450~250年前の麻布の断片や、紀元54~68年ごろの女性の肖像画などが含まれている。

 裁判所の書類によると、ニューヨーク州の判事が先月19日に押収を命じた。

 地区検察の担当者は2日、AFPに対し、今回の押収は先週仏パリで、ルーブル美術館のジャンリュック・マルティネズ(Jean-Luc Martinez)前館長に対する予審判事による捜査が開始されたことに関係していると話した。

 2013~21年にルーブルの館長を務めたマルティネズ氏をめぐっては、民主化運動「アラブの春」の混乱に乗じエジプトで略奪されたとみられる考古学的遺物の来歴の隠蔽(いんぺい)を共謀した疑いが浮上している。

 この件を最初に報じた月刊紙アートニュースペーパー(The Art Newspaper)によると、押収された5点はメトロポリタン美術館が13~15年に購入した。

 同美術館は、17年に購入した古代エジプトの神官のひつぎが略奪されたものだったと判明したことを受け、19年にエジプトに返還している。

 19年の地区検事局の記録によると、このひつぎの売買に、独ハンブルクの美術商の男をはじめ今回ルーブルの件で捜査対象となった人物が複数関わっていた。(c)AFP