【5月23日 東方新報】中国の大手ソーシャルプラットフォーム「豆瓣(Douban)」には、「一人っ子の両親養老交流会」という名前のグループがあり、成人した8万人の「一人っ子」が登録している。高齢になった両親の病気や年金、保険、介護などについて相談や意見交換をしている。

「夫と離婚して、子どもはまだ5歳。病気がちな両親の面倒を見る時間もお金もありません。どうすればいいでしょうか」

「父親が糖尿病になりました。今からでも加入できる保険はあるでしょうか」

「上海市に住んでいます。広州市(Guangzhou)の母親が大腸がんになりましたがビデオで通話する以外、何も助けることができません」

 中国で人口抑制策として一人っ子政策が始まったのが1979年。最も早い世代で今年、43歳。一人っ子世代が高齢の親の面倒を見る時代が本格的に到来している。

 グループ管理人の呂薩拉(Lv Sala)さんは1990年代生まれ。「今は私の祖父が脳卒中を患い、両親が付きっきりで介護をしています。将来、私が両親をどうやって世話をするか、今から心配です」と話す。

 第7回国勢調査によると、2020年で中国の65歳以上の人口は1億9000万人。総人口の13.5%を占める。国際的には65歳以上の人口が7%に達すると高齢化社会、14%に達すると超高齢化社会となる。中国は超高齢化社会の入り口に差しかかっており、高齢者を支える主力の大半が一人っ子となる。

 中国では伝統的に「親の老後は子どもが世話をする」という意識が今も根強い。ただ、それも親子が同居し、複数の子どもがいる昔ながらの生活スタイルが前提。あるインターネット上の調査では、成人となった子どもの61%は親と別の都市に住んでおり、親と会うのは「年に1~2回」と回答している。

 最近は高齢者の介護施設が増えているが、まだ絶対数は少ないのが現状。さらに中国では都市と農村で医療保健や年金の制度が異なっている。近年は統一化が進んでいるが、農村部の社会保障制度はまだ充実しているとは言い難い。国勢調査によると、農村部の60歳以上の割合は23.8%で、都市部より7.7ポイント高い。働く世代は都市部に出稼ぎに行く人が多いためだ。

 厚生労働省に相当する国家衛生健康委員会は、今後の高齢者のケアについて「9073モデル」を中心に据えるとしている。老後を自宅で暮らす人が90%、地域のコミュニティーを基盤に過ごす人が7%、施設に入所する人が3%という意味だ。1人暮らしの高齢者のベッドに体温や心拍数を計測する装置を取り付け、異常があれば家族や地域の管理センターに連絡が行くシステムを導入したり、室内に感知センサーを導入して浴室でずっと動かないなどの動きがあればすぐに把握したりする「ITケア」を進めようとしている。ただ、社会保障の専門家は「IT化、スマート化だけでは限界もある。特に農村部では取り残された高齢者のケアは深刻となっている。総合的な高齢者対策が必要だ」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News