【5月21日 AFP】世界保健機関(WHO)欧州地域事務局のハンス・クルーゲ(Hans Kluge)事務局長は20日、欧州各国で感染が広まっている珍しいウイルス感染症「サル痘」について、今後数か月間で感染拡大が加速する恐れがあると警告した。

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 クルーゲ氏は、夏の始まりに伴い「大勢の人が集まる祭りやパーティーが開催され、感染が加速することを懸念している」と述べた。

 サル痘は特徴的な発疹を引き起こすが、死に至ることはまれ。これまではアフリカ中部・西部で確認されていたが、ここ数週間でポルトガルやスウェーデンなどの欧州諸国の他、米国、カナダ、オーストラリアでも感染者を確認。クルーゲ氏はこの感染拡大を「異例」としている。

 クルーゲ氏によると、最近確認された感染者のうち、サル痘が流行している地域への渡航歴があったのは1人のみ。早期感染者の大半が、同性と性交渉を持った後に医療施設を受診した男性だった。このことから、人から人への感染が「しばらく前から起きていた」可能性があるとクルーゲ氏は指摘している。

 WHOは、確認された感染者の多くが同性愛者や両性愛者、あるいは男性と性関係を持つ男性だったことについて調査しているとしている。

 20日には、フランスとベルギー、ドイツでも初の感染者を確認。イタリアでは3人、ポルトガルではこれまでに23人の感染が確認された。

 スペイン保健省によると、同国は7人の感染を確認し、さらに23人について感染の有無を調べている。一方、マドリード州の保健当局は21人の感染を確認したとしており、同州の感染者は全国集計に加算されていないものとみられる。

 英保健当局は同日、イングランドでさらに11人の感染が確認され、感染者数は20人となったと発表した。

 英国保健安全保障庁(UKHSA)は、サル痘はこれまで性感染症として認知されていなかったものの、英国と欧州の感染者には同性愛者や両性愛者の男性が「顕著な割合」で含まれていたことから、両グループに該当する人々に対して症状に注意するよう促した。

 サル痘ウイルスは、感染者の外傷や飛沫(ひまつ)、寝具やタオルなどの共用物と接触することで感染。症状には発熱、筋肉痛、リンパ節の腫れ、悪寒、倦怠(けんたい)感が含まれる他、手や顔には水疱瘡(みずぼうそう)に似た発疹が出る。(c)AFP