【5月21日 AFP】ウクライナ第2の都市ハルキウ(Kharkiv)出身のストリートアーティスト、ハムレット・ジニキウスキー(Gamlet Zinkivsky)さん(35)は、ロシア軍による侵攻の最前線となった地元に残って街中に作品を描き続けている。

 南米ペルーのリマから英ロンドンまで、国際的に作品を発表してきたジニキウスキーさんだが、今は世界を飛び回るキャリアからいったん離れ、自らの才能を生かして自国兵士の士気を高めようとしている。

「国外に避難すれば、どこかでキャリアを継続できます。でも、それは気休めにしかなりません。ウクライナにとどまることで、国を築いている一員だという気持ちになれるんです」

 ロシアによる侵攻開始から10日ほどして、ジニキウスキーさんは比較的平穏な西部の都市イバノフランコフスク(Ivano-Frankivsk)に親族と共に移動した。

 そこで人道支援やウクライナ軍のための資金集めを行いながら、2か月が経過した頃、軍の大隊の司令官から電話が入った。「ハルキウでは君を必要としている。君の絵が必要なのだ」

 ジニキウスキーさんのベストには今、大隊のワッペンが誇らしげに付いている。

 ギャラリーでの展覧会よりも、好きな時に好きな場所で描けるストリートアートの方が、市民の士気にとって重要だとジニキウスキーさんは考えている。「思い入れのある建物が破壊されてしまったのを見た人々が、絵を目にすると笑顔になります」

 東部の小さな町イジューム(Izyum)で完成させた8作品のうち、ここ数週間の戦闘を生き延びたのは一つだけだった。同じく東部のベルジャンスク(Berdyansk)とマリウポリ(Mariupol)でも他の作品が失われた。

「この国を守るために武器を持って戦っている真の兵士たちの支えになれればと思っています。この国には人がいて、町があり、芸術家や音楽家、彼らが愛する文化があります。これが兵士を鼓舞し、戦い、守ることにつながるのです」 (c)AFP/Patrick FORT