【5月21日 東方新報】中国で、若者を中心にキャンプブームが起きている。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年以降、都会の「密」を避けて大自然を楽しむ人が増えている。

 20代半ばの李静(Li Jing)さんは5月初め、彼氏や友人と一緒に浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)郊外のキャンプ場を訪れた。「去年の国慶節(建国記念日)連休で初めてキャンプをして、ハマりました。昼はバーベキューを食べて芝生で寝っ転がり、夜はビールを飲んで星空をながめて。街の喧騒(けんそう)を離れて平和な時間です」

 今年の労働節連休(4月30日~5月4日)では、「キャンプ」に関するSNSの投稿は200万件を超えた。オンランショッピングモール「天猫(Tmall)」では1週間で4万5000張りのテントが売れている。折り畳みチェアやランタン、寝袋、ハンモック、マットなども次々と売れた。購入するのは、Z世代(1990年代中盤以降の生まれ)の若者や、親が30~40歳代の比較的若い家族が中心という。

「コロナ禍が始まった2020年から、急激にキャンプ用品を買う人が増えました」。アウトドア用品店を経営する王さんはこう話す。

「以前のキャンプといえば、テントと寝袋しか持たず、野外を散策し、簡単な食事をして寝るだけ。今は『プチぜいたく』なキャンプを好む人が増えました。大型のキャンピングカーでキャンプ場に乗り付け、おしゃれなランタンやコーヒーマシンなども持ち込み、快適さを重視しています」

 重慶市(Chongqing)の張さんは2015年に100万元(約1900万円)かけてキャンプ場を建設。利用者は少なく赤字続きだったが、「2020年から一気に予約客が増えた」という。

 使用料は1000元(約1万9000円)。リピーター率は30%で、年10回訪れる人もいる。「テントで寝ると蚊がウザい」「料理を作るのが面倒」という人のため、宿泊用のログハウスやキャンピングカーを導入したほか、すぐに料理できるバーベキューセットや天体望遠鏡、シャワールームなどもそろえている。張さんは「キャンプ気分だけ味わいたい人は、手ぶらで来ればいい」と話す。

「もうかる」と思えば、業種を超えて次々と参入するのが中国ビジネス。最近は不動産、自動車、旅行会社などが次々とキャンプ業界に乗り込んでいる。2020年以降、3万社以上のキャンプ関連企業が新規登記されている。キャンプ産業の市場規模は2015年の80億元(約1525億円)から2020年には5倍強の430億元(約8194億円)に達し、2026年には1500億元(約2兆8600億円)にまで成長すると推計される。

 ただ、張さんは「キャンプ場が本当ににぎわうのは、春の4~5月と秋の10~11月の週末や連休に限定される。それも天候次第です。キャンプ場が増えて、共倒れにならないか心配です」と打ち明ける。

 アウトドア産業の専門家も「コロナ禍が収束して通常の観光が復活すれば、キャンプブームの熱も冷めるのでは」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News