【3月21日 東方新報】世界最大の自動車市場を誇る中国で、業界をけん引しているのが新エネルギー車(NEV)だ。しかし、さまざまな波風も立っている。

 中国自動車工業協会によると、2021年の国内販売台数は前年比3.8%増の2627万5000台。世界2位の米国(1493万台)と3位の日本(444万台)の合計をはるかに上回る。

 中国では、最近は販売台数が伸び悩んでいたが、2021年は4年ぶりに増加に転じた。その立役者が、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)といったNEVだ(通常のハイブリッド車は含まない)。昨年の販売台数は前年比2.6倍の352万1000台と飛躍的に伸び、全体の13.4%を占めた。

 NEVは輸出台数も増え、中国産NEVの世界市場シェアは50%を超える。中国自動車工業協会副会長兼事務局長の付炳鋒(Fu Bingfeng)氏は「NEVは自動車業界をけん引する機関車だ」と強調する。

 ただ、政府は昨年末、NEV購入を後押しする補助金を2022年は30%削減すると表明。補助金は航続距離300キロ以上400キロ未満のEVは9100元(約17万円)、400キロ以上のEVは1万2600元(約23万5748円)などに減額された。

 そして、2010年から続けてきた補助金自体を今年いっぱいで打ち切ることも決めた。今年2月のNEVの販売台数は36万8000台で、前月比で18.6%減少。春節(旧正月、Lunar New Year)の連休(今年は1月31日~2月6日)で大半の店舗が休業となったことが大きいが、補助金削減も響いた。

 また、中国EV大手の比亜迪汽車(BYD)、新興メーカーの小鵬汽車(XPeng)、米テスラ(Tesla)など約20社が今年に入って値上げに踏み切った。値上げ幅は3000~6000元(約5万6000~11万円)程度が多いが、1万元(約18万7000円)を超える車種もある。バッテリー用のリチウムやニッケルの価格が1年間で2倍以上に急騰したことや、世界的な半導体不足、補助金削減が影響した。

 長城汽車(Great Wall Motor)傘下のEVブランド「欧拉(Ora)」は、人気の小型EV「黒猫」「白猫」モデルの受注を停止すると発表。コスト増で価格維持が困難と判断したとみられる。

 実は、中国でNEVが急成長する理由として、ナンバープレートの優先割り当て制度がある。中国の大都市では渋滞緩和や環境対策のためナンバープレートの発行枚数を制限。抽選や競売などでしか手に入らないため、「車を買ってもナンバーがないので走れない」という中国特有の現状があるが、上海市や杭州市(Hangzhou)などはNEVのナンバープレートは無制限としている。

 ただ、上海市は2月、ナンバーの優先割り当てで来年からPHVを除外すると発表。今後、同様の措置が各地で広がれば、NEV人気に陰りが出る可能性がある。

 NEVには、バッテリーの自然発火による事故の問題もつきまとう。中国全国乗用車市場情報連合会の崔東樹(Cui Dongshu)事務局長は「2022年のNEV販売台数は550万台に達する」と強気の見込みを立てるが、このまま中国のNEVが多くの課題を乗り越えて右肩上がりを続けるかが注目される。(c)東方新報/AFPBB News