【5月17日 東方新報】中国では今年に入り、80以上の都市が住宅購入促進策を打ち出している。第1四半期(1~3月)の不動産市場が低迷し、4月だけで30都市以上が新たな促進策を打ち出した。

 各都市で目立つのは、住宅購入費用の一部を補助する施策だ。四川省(Sichuan)綿陽市(Mianyang)は、2人か3人の子どもがいる家庭を対象に、購入する住宅について1平方メートルあたり200元(約3796円)の補助金を出す。江蘇省(Jiangsu)南通市(Nantong)通州区(Tongzhou)では、90平方メートル未満の新規住宅は購入価格の1%、90~144平方メートルでは1.5%を補助する。共働き家庭で144平方メートル以下の住宅を購入する場合は2%を払う。

 湖南省(Hunan)常徳市(Changde)は大学院博士課程修了者や高級エンジニアの家庭が住宅を購入する際、1平方メートルにつき200元の補助を出し、それ以外も学歴や職能に応じて1平方メートルにつき100~150元(約1898~2847円)を補助する。

 住宅ローンの金利引き下げも行われている。不動産市場の調査を手掛ける貝殻研究院(Beike Yanjiuyuan)によると、主要103都市を対象とした銀行の4月の平均金利は初回住宅購入者向けが5.17%、2戸目の購入者向けが5.45%となり、前月からそれぞれ0.17ポイント、0.15ポイント下がった。中古住宅ローンでは5%も下回っている。

 中国では2020年にコロナ禍が始まり製造業や観光業などが低迷すると、不動産へ投資が集中した。不動産価格が高騰して市民から不満が高まり、政府が2021年夏に不動産市場の過熱化にブレーキをかけるよう指示。地方政府はマンション購入を許可制にしたり、中古マンションの「参考価格」を作って価格を事実上統制したり、さまざまな規制を始めた。すると今年に入り、不動産市場の低迷が顕著となった。

 いわゆる1線都市(北京や上海などの大都市)や2線都市(各省の省都など)も影響を受けているが、3線都市、4線都市と呼ばれる地方都市の打撃が特に大きい。中国の民間不動産調査大手、中指研究院(CIH Index)によると、第1四半期で3線・4線都市の住宅取引面積は前年同期比で42.9%も下落した。国家統計局によると、3線都市の新規住宅価格は0.6%減、中古は1.9%減となった。不動産シンクタンクの易居研究院(E-House China R&D Institute)は「2022年の住宅価格は過去に例をみない下落を記録する」と予測した。

 地方都市の経済は不動産市場に依存する割合が高いため、市場の低迷は中国全体の経済成長の足かせとなる恐れがある。このため中国政府は「住宅購入者の合理的ニーズを満たす」と繰り返し強調し、各都市の住宅購入促進策を後押ししている。一方で不動産への投機熱が高まりバブルが再燃することも警戒しており、難しいかじ取りを迫られている。(c)東方新報/AFPBB News