【5月11日 AFP】ボクシングで8階級制覇を達成したフィリピンの英雄マニー・パッキャオ(Manny Pacquiao)氏が、9日に行われた同国大統領選で大敗する見込みとなった。

 昨年引退したボクシングで貧困からのし上がり、大統領選に出馬するまでになったパッキャオ氏だが、ドラッグと犯罪を厳しく取り締まるという公約は有権者の心に響かなかった。

 大統領就任を目指す活動は、これまで通りの大胆なスタイルで始め、「Man of Destiny(宿命の男)」と書かれたバスに乗り、朝のマニラを立候補申請に向かう様子をライブ配信した。

 しかし、汚職に手を染めた政治家を投獄し、自らも若い頃に覚醒剤とマリフアナを使ったと認めている中で、ドラッグの使用者を逮捕するという公約は、決定打にはならなかった。最初の開票状況が伝えられた段階で、得票は400万票以下と全体の6.8パーセントにとどまり、半数以上を獲得して当選確実となっているフェルディナンド・マルコス(Ferdinand Marcos)元上院議員、次点のレニ・ロブレド(Leni Robredo)氏に大差をつけられた。

 本人は最後まで勝利の望みを捨てていなかった。自宅のあるサランガニ(Sarangani)州で投票した後には、報道陣に「この国には、裕福な人よりも貧しい人の方が多いと信じている」と話し、「彼らには、大多数の貧しい人たちが団結し、貧困に苦しむ人が数多くいることを裕福な人に示すと約束したい」と意気込んでいた。しかし敗戦は驚きではなく、事前調査を見る限り、当選の見込みはほとんどなかった。

 大統領選の敗北で失ったのは、資金とプライドだけではなく、セレブリティーがそろう上院2期目への出馬も諦めなければならなかった。立候補していれば、当選する可能性はかなり高かった。

 昨年11月にAFPが行ったインタビューでは、大統領選に負けた場合でもボクシングに復帰はしないと話し、「自分は間もなく43歳になるし、もう十分だ。やり尽くした」とコメントしていた。そのときは、落選した場合はサランガニに所有する20ヘクタールの土地で果物を栽培して過ごすと話している。(c)AFP/Allison JACKSON