【5月5日 AFP】疲弊し、緊張と不安の表情を浮かべたウクライナ兵がすし詰めになった軍用車両が、同国東部ドンバス(Donbas)地方の道路を速度を緩めずに走り過ぎた。ロシア軍が進撃を続ける前線から、休息のため一時撤退を命じられたばかりの第81旅団所属の兵士たちだ。

 部隊は先月末、集中砲火の下、撤退地点のスビアトヒルスク(Sviatoguirsk)まで林の中を12キロ歩いて移動。その後、この車両に乗り込んだ。

 第81旅団は過去数か月にわたり、ドンバス地方で一つ一つ村を制圧しながら徐々に進撃するロシア軍を押し返すために戦ってきた。

 部隊を率いるのは、オデーサ(Odessa)の士官学校出身のエウヘン・サモイロフ(Yevgen Samoylov)氏(21)。徴集兵130人を指揮している。自分の倍以上の年齢の兵士も多い。

 童顔で短いひげを生やしたサモイロフ氏は「自分にとって最初の戦争になった。卒業は4か月後のはずだったが、ここに派遣された」と話した。

 他の部隊でもそうであるように、第81旅団の兵士も戦死者数については語らない。この話になると、サモイロフ氏は目に涙をためる。心の傷を癒やす時間はまだ与えられていない。

 廃虚を転用した療養拠点に到着した一行は武器を降ろし装備を解くと、すぐに身体検査を受ける。粗末な部屋に電気は通っていない。 

 軍医のワディム・キリロフ(Vadym Kyrylov)氏(25)によると、多数が額などにけがをしており、中には骨折したり砲弾でけがをしたりしている兵士もいる。「だが、一番多いのは身体上の問題で、高血圧や持病の悪化が見られる」と同氏は述べた。

 また兵士の多くに、長期間不衛生で低温・高湿の環境に置かれることによる「塹壕(ざんごう)足」と呼ばれる疾患が見られるという。キリロフ氏は、数か月にわたって靴を乾かせない兵士には「足の負傷が多い。主に水虫や炎症だ」と説明した。

 身体検査が終わると、兵士は一様に同じことを始める。一人きりになって、携帯電話で恋人や子ども、親に電話をかける。兵士は前線では、携帯電話や位置情報を利用するアプリの使用を禁じられている。

「戦場に戻る前にリラックスして心身の傷を癒やし、体力を回復するための時間だ」とサモイロフ氏は話した。(c)AFP/Daphne ROUSSEAU