【5月3日 東方新報】中国では近年、「桜ブーム」が起きている。「春の限定商品」として桜をテーマにした飲食物が次々と登場し、多くの店舗がピンク色に染まっている。

「桜フレーバーのティードリンク」「桜味のソフトクリーム」「ポテトチップス桜風味」「桜ケーキ」「桜味のチョコレート」「桜のインスタントラーメン」──。

 桜がまだ咲き始めていない3月ごろから、中国各地のファストフード店やスーパー、コンビニなどで、「桜」と名付けた商品が店頭に並ぶ。スターバックスも中国限定の桜フレーバーのラテや桜模様のカップなどを販売。スポーツウエア大手の李寧(Li Ning)はウエアや帽子、バッグなどで桜シリーズを発表した。

 中国では、国を代表する花というと牡丹(ボタン)か梅が一般的。武漢大学(Wuhan University)の桜並木や北京市の玉渊潭(Yuyuantan)公園など、有名な桜の名所もあるが、桜は「日本の花」というイメージが強い。

 ところが10年ほど前から、全国各地の桜の名所を訪れて花見を楽しむ人が増加。若者の間では、中国の伝統衣装をイメージした「漢服」をまとい、コスプレのような姿で春の日差しを受けながら満開の桜をめでるのが流行にもなった。

 突然の桜ブームは、日本のアニメや映画でたびたび感動的な桜のシーンが登場することや、観光や留学で日本を訪れて花見を体験した人が増えた影響ともいわれている。また、誰もがスマートフォンを持つ時代、「映える」スポットで撮影した写真や動画をSNSに投稿することが競争のように流行しており、一面ピンク色に染まる桜並木は最高の撮影ポイントとなっている。

 そうしたブームに乗って、桜をイメージした飲食物が次々と誕生するようになった。

 ただ、塩漬けにした桜の葉を使った日本の桜餅などと異なり、中国で「桜」と銘打った飲食物に桜は含まれていない。ドリンクやアイスはサンザシやドラゴンフルーツ、イチゴなどを使って桜の風味を「演出」している。商品の容器やパッケージをよく見ると、小さな文字で「この商品は桜をイメージしたもので、実際に桜は入っていません」と説明している。

 このため、「実際の桜の花はそれほど香りがないし、食べれば苦いだけ」「桜ではなく、ピンクという『色』を食べている」という声も。見た目重視の桜商品バブルに「桜花騙局(桜の詐欺)」という批判も出ているが、実際に人々の目を引きつける桜の花とともに、今後も当分はブームが続きそうだ。(c)東方新報/AFPBB News