【4月22日 AFP】ウクライナ南部ザポリージャ(Zaporizhzhia)の南東約60キロに位置するマラトクマチカ(Mala Tokmachka)村。ターニャ・ロス(Tanya Los)さん(59)の自宅の台所に17日、ロシア軍のロケット弾が直撃した。ロスさんは食器を洗っているところで、横には娘のアナスタシアさん(24)がいた。

 2人とも奇跡的に無傷だった。

 ロシア軍はウクライナ南部・東部で攻勢を強めている。マラトクマチカではここ数週間、ロケット弾が降り注ぎ、多くの民間施設が被害を受けている。

 村の学校の一つは、校内に複数の教師がいる時に砲撃を受けた。地元文化センターの正面は、ロケットが着弾して穴が開いた。

 ロス家は幸運な方だ。

 台所は母屋から離れた所にあり、ロケット弾が貫通したのはその一角だった。

■絶え間なく続く砲撃

「冷蔵庫がなかったら、娘は殺されていた」とターニャさんは言った。台所に飾られた正教会のカレンダーにある聖像が「守ってくれた」と主張した。

 アナスタシアさんはあまりに動揺しており、AFP取材班と話すことができなかった。

 ロケットの残骸はまだロス家の台所に落ちている。母と娘がどうやって生き延びたのかが不思議なほどだ。

 2メートル近いロケットは、飛行中に尾翼が外れ、真っ二つに折れていた。2人が助かったのは、ターニャさんが言うように「奇跡」だ。

 AFPは、ロケットの製造番号とノルウェー防衛技術研究機構(FFI)のオンラインアーカイブから、ロス家に着弾したのは旧ソ連製BM27多連装ロケットランチャー「ウラガン(Uragan)」から発射されたことを発見した。

 ターニャさんは今では、爆撃音を聞くたびに地下室に走って行く。「問題は、ここ2日間は爆撃音が鳴りやまないことだ。昼も夜も聞こえる」

 AFP取材班がマラトクマチカに滞在した1時間半の間、重火器の音が絶え間なく続いていた。

 ウクライナ軍の発砲は近くから聞こえ、ロシア軍は遠方から応戦していた。

 住民がほぼ去った村は、毎日少しずつ破壊されている。

 ターニャさんは、飼っている牛2頭が唯一の財産だと話す。うち1頭はもうすぐ子どもが生まれる。

 重火器のごう音が近くで響く中、ターニャさんは「牛を置いてはいけない」とため息をついた。(c)AFP/Joris FIORITI