【4月19日 AFP】ウクライナの首都キーウ中心部の公園。兵士が妻と子どもたちに満開のマグノリアを背に立つよう促す。スマホを構え、「笑って」と声を掛けた。

 散歩をする人、テラス席で飲み物を注文する人──。戦争が始まって2か月近くになるが、日常を取り戻そうと、穏やかな春の日差しの中、街に繰り出す人々の姿があった。

 ナタリヤ・マクリエバ(Nataliya Makrieva)さん(43)は、母親と腕を組んで公園を歩いていた。自分の目が信じられないと話す。

「中心部に来たのは(侵攻後)初めて。公共交通機関の様子や道行く人を見に来た。人出を見ることができて本当にうれしい」

 草の上には兵士が大の字になって、青空を見上げながらパイプをくゆらせていた。クルミの木の枝には別の2人の兵士が寄りかかっていた。

 ドミトロ・トカチェンコ(Dmitro Tkachienko)さん(40)は、2015年以来、東部で親ロシア派武装勢力と戦っている。「私たちにとって、イルピン(Irpin)やホストーメリ(Gostomel)で1か月以上過ごした後の初めての息抜きだ」と語った。

 82歳のハンナ・ミハイロウナ・フリシュコ(Hanna Mykhailivna Hryshko)さんは、いつもそうしているかのように、エレガントなウールの帽子をかぶってベンチに座っている。

「みんな戦争のことを忘れたい。でもすぐに爆撃が始まって、空襲警報が鳴り響く。そうするとまた隠れなければ」。笑顔は消え、涙が光った。

 3週間ばかり、キーウでは比較的平穏な日が続いていた。しかし、ロシア軍は先週、2日連続で近郊の軍需工場を攻撃。キーウへの新たな攻撃も警告している。

 市内では、戦争の痕跡は限られている。市当局によると、ロシアの侵攻が始まった2月24日から最後の攻撃があった3月22日までに、100棟の建物が破壊された。

 市内ではアルコールの販売は午後4時以降禁止。同9時から翌日午前6時まで外出は禁止されている。

 現在、フードデリバリーを頼んだり、髪を切りに行ったり、ショッピングモールに出掛けたり、地下鉄に乗ったり、バイクに乗ったりすることはできる。

 ただ、教育施設や大半のレストラン、コンサートホール、博物館、ジムは依然、閉鎖されている。

 戦闘のピーク時には、280万人の人口の半分が市外へ避難した。ビタリ・クリチコ(Vitali Klitschko)市長は、避難した市民に戻らないよう呼び掛けている。それにもかかわらず、地元メディアによると、毎日約5万人が戻って来ている。(c)AFP/Daphne ROUSSEAU