【4月16日 AFP】ウクライナの首都キーウ近郊のブチャ(Bucha)。フランスの国家憲兵隊がドローンを飛ばし、70人の遺体が埋められていた全長14メートルの集団埋葬地を撮影する。

 ここは、ブチャで見つかったものとしては最大の集団埋葬地だ。フランスから派遣された法医学捜査官ら18人が数日前から埋められていた遺体の検視と身元確認を進めている。

 普段はフランス国内の犯罪や災害、交通事故などの現場で活動している。だが今は、ロシア軍に占領されていたウクライナ各地で進められている国際刑事裁判所(ICC)の捜査を支援する。

 白いつなぎや紺色の制服を着用し、マスクを着けた仏チームは、1時間足らずで黒い袋に入った3人の遺体を掘り出した。

 遺体は仏憲兵隊の文字が書かれた白いテントの中へ運び込まれ、検視台の上に置かれた。外から中の様子は見えないように配慮されている。

 中では捜査官6人が、1人目の検視を開始。死亡日の推定や、被弾や爆死など死因の特定が任務だ。この段階では目視による検査と写真・動画の撮影、DNAサンプルの採取が約30分かけて行われる。

 近くにはフランスの移動式DNA鑑定ラボが駐車しており、行方不明者の親族から提供されたサンプルを用いて遺体の身元特定が進められている。

 その後、遺体は司法解剖の専門機関へ運ばれ、戦争犯罪とみなし得る行為の痕跡があるかどうか判定される。

 こうして集められた全ての情報が統合され、ウクライナ当局と国際機関による捜査に役立てられる。

 ロシア軍は3月30日に撤退するまで約1か月にわたりブチャを占領していた。その間、市民は親族の遺体を自分たちで仮埋葬していた。

 撤退直後、少なくとも20人の民間人男性の遺体が路上に点々と放置されているのが見つかった。中には、後ろ手に縛られた遺体もあった。

 ブチャではこれまでに複数の集団埋葬地が見つかっている。当局によると、400人以上の遺体が確認されている。

 ウクライナ検察のルスラン・クラウチェンコ(Ruslan Kravchenko)氏は、フランスの捜査官が活動している集団埋葬地では、「70人の遺体が見つかった。大半が民間人だが、警官1人、兵士2人の遺体もあった」と話した。

 検察によると、手作りの十字架が立てられた別の埋葬地では、女性と4歳、11歳の子どもの遺体が掘り出された。3人は家族で、乗っていた車がロシアの装甲車に攻撃され、炎上したとみられる。(c)AFP/Daphne ROUSSEAU