【4月16日 AFP】新型コロナウイルス感染症で亡くなった多くの人と同じく、ブラジルのカルロ・シュナイデル(Karlo Schneider)さんも家族に別れを告げられないままこの世を去った。だが、他の人々と違ったのは、死後1年たって家族にメッセージを届けられたことだ。

 北東部の町ナタール(Natal)でホテルの支配人を務めていたシュナイデルさんは昨年2月のある朝、家族にキスをして出勤したきり、二度と家族をハグすることはできなかった。

 その日のうちにコロナの症状が出たため、家族にうつさないよう勤務先のホテルに宿泊。それ以降の家族との接触は、病床からの電話と、互いの距離を守った上で一目互いの姿を見ることだけだった。病状が悪化したシュナイデルさんが自分の車で病院に向かうのを、妻と3人の子どもは自宅から手を振って見送った。

 話は2006年のディナーパーティーにさかのぼる。シュナイデルさんの妻、アルシオーネ(Alcione Schneider)さん(41)は当時、長女を身ごもっていた。シュナイデルさんは友人らと、これから生まれる娘が15歳を迎えた誕生日に送る手紙を書くことを思い付いた。

 熱心な「ビートルズ(The Beatles)」ファンで、希少なレコードを多数持っていたシュナイデルさんは、最も貴重なレコードの中に数通の手紙をしまった。

 アルシオーネさんは、「夫はこういうことが好きだったのです」と語った。シュナイデルさんがサプライズを仕掛けることはしょっちゅうで、この手紙のことも2人ともすっかり忘れていたとアルシオーネさんは言う。

■「手紙を見つけ出さないと」

 それから14年後、コロナの流行で世界中は大混乱に陥った。シュナイデルさんも失業し、自分のレコードコレクションの大半を売ることにした。

 昨年初め、シュナイデルさんは280キロ離れたモソロ(Mossoro)のホテルに再就職するが、間もなくしてコロナに感染。ブラジルでは感染の第2波が始まり、1日当たりの死者数が3000人を超えていた。

 何もかもがあっという間だったとアルシオーネさんは言う。一家でモソロに引っ越したのが2月12日。その1週間後にシュナイデルさんは体調を崩し、3月11日に息を引き取った。40歳だった。

 シュナイデルさんがずっと前に書いた手紙のことをアルシオーネさんが思い出したのは、それからだ。

 長女のバルバラ(Barbara Schneider)さんは、シュナイデルさんの一周忌のちょうど1週間前に15歳の誕生日を迎えようとしていた。

「大変。あの手紙を見つけ出さないと」。アルシオーネさんは、当時の思いを振り返った。