【3月31日 AFP】ウクライナ最大を誇るミコライウ(Mykolaiv)動物園。飼育頭数4000に上り、120年以上の歴史がある動物園は今、ロシア軍のロケット弾が着弾する日が続いている。

 街には空襲警報が鳴り響く。市内には、黒海(Black Sea)に面する港湾都市オデッサ(Odessa)を目指すロシア軍にとって要所となる川が流れている。

 動物園に最初のロケット弾が着弾したのは2月27日。トラ舎とホッキョクグマ舎の間の通路が破壊された。このロケット弾は現在、園内の博物館に展示されている。

 職員にも動物にもけがはなかった。しかし、「強いストレス」となった出来事だったと、ウォロディミル・トプチー(Volodymyr Topchyi)園長は話す。園から600メートル離れた場所では戦車による戦闘が発生した。

 その後、ロケット弾3発が園内に着弾し、うち1発は鳥舎に落ちた。残りの2発は事務所の近くに着弾した。職員によると、ロシア軍が「ウラガン(Uragan、ハリケーン)」と呼ぶ多連装ロケットランチャーに搭載されたクラスター弾だった。

 クラスター弾はオスロ条約で製造や使用が禁止されているが、ロシアは加盟していない。

 トプチー園長によると、園で飼育する約400種の動物のうち半数近くが国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(Red List)の危惧種に指定されている。この中には、アムールヒョウも含まれている。

 南ブーフ(Buh)川に架かる橋を渡り、ウクライナ軍の支配下にある地域に動物を避難させるのは不可能だと指摘する。

「移送する車両が足りない」「まだ寒いので、キリンやゾウ、カバを外に出したら死ぬ恐れもある」

 トプチー園長は動物を見捨てる考えはない。動物の世話を続ける100人ほどの職員を「英雄」だとたたえる。中には、動物園と自宅を行き来する際のリスクを軽減するため、園に泊まり込んでいる職員もいる。

 飼育員のオルガさんは、池の中を泳ぎながら鼻を鳴らす雌カバのリッキー(Rikky)を見ながら、動物たちは大抵は「静かに暮らしている」と話した。

 トプチー園長も「餌を食べ、繁殖している。問題なく暮らしている」「春の出産シーズンが始まる」と語った。

 3月8日には、激しい爆撃が続く中、ヒョウが出産した。

 動物園は今、来場者を受け入れていない。しかし、支援のため入園券を購入する人は後を絶たない。フェイスブック(Facebook)に動物園を支援するという投稿をする人もいる。(c)AFP/Selim SAHEB ETTABA