【3月30日 東方新報】中国で薄毛に悩んでいる人は2億5000万人を超え、6人に1人以上が抜け毛トラブルを抱えている──。

 国家衛生健康委員会が発表した「2021年国民健康洞察リポート」によると、「95後(1990年代後半生まれ)」「00後(2000年代生まれ)」の若者の33%が薄毛に悩んでいることが分かった。

 若者の間で抜け毛トラブルが増えているのは、IT技術者やプログラマーをはじめ仕事がハードでストレスを抱えている人が増え、その一方で夜遊びや夜更かしが当たり前になったライフスタイルが背景にある。また、寝不足や急激なダイエットで薄毛に悩む女性もいる。抜け毛に悩む人の割合は北京市や上海市、深セン市(Shenzhen)、広州市(Guangzhou)など大都市が多い。

 薄毛対策には以前から漢方を使った養毛剤や育毛シャンプーなどはあるが、特に最近人気なのが、黒ゴマとハチミツなどを球形に加工した食品「黒芝麻丸」。ネットのライブ販売で絶大な人気を誇るインフルエンサー李佳琦(Li Jiaqi)さんが「黒芝麻丸を毎日2個食べて、生え際を守ろう」と1箱当たり約100元(約2000円)の商品を紹介すると、販売開始から数分で2万個が売れた。

 多くのメーカーが「黒芝麻丸」と名付けた商品を売り出し、オンラインショップでは月に10万個以上売れているサイトもある。ただ、明確な医学的根拠はなく、消費者から「年間6500元(約12万6000円)も使ったが効果がない」などの不満の声も出ている。

 本格的に薄毛を解消したい人の間で広まっているのが「自毛植毛」。後頭部や側頭部の髪を毛包(毛を産生する皮膚組織)ごと採取し、薄毛が気になる箇所に植え替える術式だ。費用は毛包1か所につき10元(約190円)前後で、手術費用は数万元から10万元(約190万円)を超える場合もある。植毛産業は2016年の57億元(約1100億円)から2020年には200億元(約3880億円)に達している。

 インターネットや街角の看板で「手術に痛みはなく、あっという間に髪がフサフサ」「手術の安全性は100%、毛包の生存率は95%」といった広告が見られるようになったが、「麻酔をしても痛みがひどかった」「移植した毛包から毛が生えてこない」という不満も多く、全国で訴訟が起きている。

「頭頂経済」と呼ばれるヘアケア市場は2020年で400億元(約7760億円)に達し、2027年には2000億元(約3兆8800億円)に上ると予測され、「生え際を防ぐ」といった食品の科学的根拠や植毛産業の安全性向上が求められている。(c)東方新報/AFPBB News