【3月28日 AFP】米カリフォルニア州ロサンゼルスで27日、第94回アカデミー賞(Academy Awards)授賞式が行われ、ろう者の家族と一人だけ耳が聞こえる娘を描いた『コーダ あいのうた(Coda)』が配信サービスの映画として初の作品賞を受賞した。

 授賞式は、ビヨンセ(Beyonce)のパフォーマンスで幕を開けた。式ではウクライナの人々への黙とうが行われ、プレゼンターを務めた同国出身のミラ・クニス(Mila Kunis)は、「これほどの打撃」を受けながら立ち上がろうとする人々に「強く胸を打たれる」とスピーチした。「#WithRefugees(難民と共に)」と書かれた青いリボンを身に着けた出席者も見られた。

 司会を務めたのはワンダ・サイクス(Wanda Sykes)とエイミー・シューマー(Amy Schumer)、レジーナ・ホール(Regina Hall)。シューマーは、「今年のアカデミーが3人の女性を司会者に雇ったのは、男性1人を雇うよりギャラが安いから」と性差別を皮肉ったジョークを飛ばした。

 動画配信サービス「Apple TV+」作品として快挙を達成した『コーダ』のプロデューサー、フィリップ・ルスレ(Philippe Rousselet)氏は「今夜、私たちの『コーダ』を歴史に刻んでくれたアカデミーに感謝します」とスピーチした。

 ダークな心理サスペンス調の西部劇『パワー・オブ・ザ・ドッグ(The Power of the Dog)』は最多12部門にノミネートされ、米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)初の作品賞を期待されていたが、受賞はジェーン・カンピオン(Jane Campion)氏の監督賞のみにとどまった。女性監督の受賞はオスカー史上3人目。

 村上春樹(Haruki Murakami)氏の短編小説を下敷きにし、濱口竜介(Ryusuke Hamaguchi)監督が手掛けた日本の『ドライブ・マイ・カー(Drive My Car)』は国際長編映画賞に選ばれた。

『ウエスト・サイド・ストーリー(West Side Story)』で助演女優賞を受賞したアリアナ・デボーズ(Ariana DeBose)は、「アフリカ系ヒスパニックの有色人種でクイアであることを公表している女性」として快挙だと喜びを語った。

 SF大作の『DUNE/デューン 砂の惑星(Dune)』は音響賞、編集賞、視覚効果賞など、最多の6部門を受賞した。

 一方、プレゼンターのクリス・ロック(Chris Rock)が、映画『G.I.ジェーン(G.I. Jane)』の役柄で髪形を丸刈りにしたデミ・ムーア(Demi Moore)に触れ、脱毛症を患っているジェイダ・ピンケット=スミス(Jada Pinkett Smith)をジョークにし、夫のウィル・スミス(Will Smith)がロックを平手打ちして騒然とする場面もあった。

 台本通りなのか本気なのか、平手打ちは視聴者をあぜんとさせたが、その後『ドリームプラン(King Richard)』で主演男優賞を受賞したスミスは、ステージ上で涙ぐみ、ハリウッド(Hollywood)で「他者をばかにする人々」への失望を訴え、アカデミーおよび「ノミネートされた皆さん」に謝罪すると述べた。