【3月30日 AFP】ロシアによるウクライナ南部クリミア(Crimea)併合に抗議したため、ロシアに拘束され、5年間収監されたウクライナ人映画監督オレフ・センツォフ(Oleg Sentsov)氏(45)は今、ウクライナでロシアとの戦いの前線にいる。

 映画の撮影をしているのではなく、ウクライナに侵攻したロシアと戦うため国民防衛隊に志願したからだ。

 ニット帽をかぶり、カーキ色の迷彩服に身を包んだセンツォフ氏は「実際の戦闘は、映画を見て想像するようなものとはまったく異なる」と話す。以前はきれいにそっていたひげは、今では伸びている。

「接近して戦ったり、小火器を撃ったりといったことはあまりない。砲撃がほとんどで、塹壕(ざんごう)で前線を維持しつつ、爆撃で死なないようにする」とAFPに語った。

 センツォフ氏は独立系映画監督として順調に成功を収めていた。だが、2014年に首都キエフの独立広場(Independence Square)で起こったマイダン革命や、その後のロシアのクリミア併合で人生が一変した。

 14年に拘束され、ロシアで裁判にかけられ、放火を企てたとして有罪判決を言い渡され、北極圏の強制労働収容所に送られた。145日間にわたるハンガーストライキを行い、体重が30キロ減ったこともある。収監中に欧州連合(EU)の人権賞「サハロフ(Sakharov)賞」を受賞。19年に釈放された。

 ロシアで長年収監されていたことで、ロシア政府はクリミアを奪うだけでは満足しないと分かっていたと、防壁に寄り掛かりながら語った。

「釈放後、『ロシア人を憎むなんて過激だ。それほど悪いやつらじゃない』と言う友人もいた」「でも今では分かってくれた。私はあそこで5年間過ごした。やつらがウクライナ人や欧州人を、帝国的野心を持って、残虐に扱うのを目撃した」