【3月24日 AFP】ウクライナの首都キエフの流行最先端レストラン「チェルノモルカ(Chernomorka)」。ロシアによるウクライナ侵攻後、店は営業を停止し、今は無料で食事を配布している。

 水槽の中の多数のカキが、食文化がにぎわっていた時を思い出させる。

 チェルノモルカは、食料の入手が困難な人を支援するレストランの一つだ。

「これが私たちにできることだ」と、チェルノモルカの開発部門責任者ドミトロ・コストルビン(Dmytro Kostrubin)さん(42)は話す。

 ロシアの侵攻により営業停止を余儀なくされるまで、パンケーキのイクラ添えやムール貝のテルミドールなどがメニューに並んでいた。

 今は温かいチキンとライスを、分厚いコートを着込んだ人々に無料で提供している。侵攻後、アルコールの販売が禁止されたため、飲み物はシャンパンではなくオレンジジュースだ。

 必要な人に配布できてはいるものの、ロシア軍がキエフを包囲しようとしているため、食料はますます不足し始めている。コストルビンさんによると、受け取りに来るのは高齢者がほとんどだ。

 今のところキエフは、マリウポリ(Mariupol)やハリコフ(Kharkiv)のような窮状には陥っていない。ただ、外出禁止令が出されている間は店の商品は品薄になり、長蛇の列ができることもある。

 建設会社の元経理担当のミヌアル・バリスベコワ(Minuar Barisbekova)さんは、無料配布の知らせをメールで受け取り、運動も兼ねて店に来たと話した。「そうでなければ、一日中家にいておびえていた」と語った。「ボランティアをやりたいと思ったけれど、断られるだろう。74歳だから」

 チェルノモルカの食事の無料提供は、全国で飲食店を展開するアレックス・クーパー(Alex Cooper)氏が経営するキエフ・フードマーケット(Kyiv Food Market)と共同で行っている。

 市民だけではなく兵士にも食事の提供を行っている。

 フードマーケットに入店する「モロディスト(Molodist)」のマネジャー、パブロ・シェブツォフ(Pavlo Shevtsov)さんは、これまでに6000食を提供したと話した。

「私たちは料理ができる」「戦闘や治療、武器の使い方は分からないかもしれないが、自分たちにできることをやっている」と語った。(c)AFP/Danny KEMP