【3月17日 AFP】イランで長期間にわたり拘束されていた英国・イランの二重国籍の男女2人が16日、解放された。2人は17日早朝に英国に帰国し、家族と再会を果たした。

 解放と同じタイミングで、英政府は白紙となった過去の防衛契約をめぐるイランへの負債を返済したことを認めた。

 解放されたのは、ナザニン・ザガリラトクリフ(Nazanin Zaghari-Ratcliffe)さんとアヌシェ・アシュリ(Anoosheh Ashoori)さん。ザガリラトクリフさんは慈善団体「トムソン・ロイター財団(Thomson Reuters Foundation)」の職員で、2016年にテヘランの家族の元を訪れた際に拘束され、体制転覆を企てたとして禁錮5年の有罪判決を受けた。ロンドン南東部出身で元エンジニアのアシュリさんは2017年に拘束され、イスラエルのスパイ活動に関与したとして禁錮10年の判決を受けた。

 2人はオマーン経由でイングランド南西部のブライズノートン(Brize Norton)空軍基地に到着。飛行機から2人が姿を現すと、ザガリラトクリフさんの娘ガブリエラちゃん(7)が「あれはお母さん? お母さんだ!」と叫んだ。その様子は、アシュリさんの娘エリカさんがインスタグラム(Instagram)でライブ中継した。

 再会を前に自宅でAFPの取材に応じたザガリラトクリフさんの夫リチャード・ラトクリフ(Richard Ratcliffe)さんは、「妻はいつも、まず私が入れたお茶を一杯飲みたいと言っていた」と話した。

 アシュリさんの家族は「うれしい。私たち家族の基盤は1672日前、父・夫の不当な拘束で揺らいでしまった」「今、家族の礎が戻ってきたので、同じ基盤を再建するのが楽しみだ」と述べた。

 リズ・トラス(Liz Truss)英外相は、2人の解放と「並行して」、1970年代に英国が王制イランと締結した契約をめぐる負債額3億9400万ポンド(約610億円)を支払ったことを明らかにした。

 解放された2人の家族は、負債返済が解放の条件だったとみている。

 オーストリア・ウィーンでは、イランと米英などが2015年のイラン核合意「包括的共同行動計画(JCPOA)」の再建に向けた詰めの協議を行っている。核合意ではイランの核開発抑制と引き換えに対イラン制裁を緩和するとしているが、イランは16日、合意再建に当たって米国との間に「二つの問題」が残っていると述べた。(c)AFP/Charles ONIANS