【4月1日 AFP】アフガニスタン北西部ファルヤブ(Faryab)州の州都マイマナ(Maymana)を、新市長ダムラ・モヒブラ・ムワファク(Damullah Mohibullah Mowaffaq)氏(25)が歩く。ムワファク氏はイスラム主義組織タリバン(Taliban)の元スナイパーだ。

 タリバンが実権を掌握してから3か月後の昨年11月、ムワファク氏は人口10万人のマイマナ市長に就任した。

 タリバンでは一、二を争うスナイパーだったムワファク氏だが、今は下水道のつまりの処理や道路の建設計画の策定、住民同士の口論の仲裁など日々の市政に追われている。

 ムワファク氏の変わりようは、武装勢力が国を統治するというタリバンの変貌そのものを反映している。

 ムワファク氏はAFPに「戦っている時の目標は明確で、外国による占領や差別、不正を終わらせることだった」「今の目標も明確だ。汚職と闘い、国を繁栄させることだ」と語った。

 ムワファク氏は市内を歩き回り、側溝の掃除をする市職員に話しかける。不満や提案があれば、伸び続けるやることリストに追加される。

 タリバン出身ではない副市長は「新市長は若くて、学もある。一番大事なのはこの市の出身だということだ」「人との接し方もわかっている」と話した。

 地方の貧困家庭出身で、マドラサ(イスラム神学校)で教育を受けたタリバン戦闘員も多い中、ムワファク氏は貿易業を営む裕福な家庭の出身で、マイマナで育ち、勉学にも運動にも秀でていた。

 19歳でタリバンに加わり、ファルヤブ州の小隊を率いるまで昇進した。

 タリバンで最も優れたスナイパーだったといわれているが、本人はその時代の話をすることは避けているようだ。

 だが、AFPの取材中、自分が所属していた部隊が支配していた村の近くの戦闘で損傷を受けた家の前で足を止めた。かつて身を隠し、米軍を監視した場所だった。

「彼はこの家から米兵を銃で撃ち殺した。そうすると飛行機が来て爆撃されたんだ」と地元の農民は話した。

 ムワファク氏が関与しているかどうかは不明だが、2019年中頃、米国は特殊部隊の隊員がファルヤブの戦闘で殺害されたと明らかにした。

 ムワファク氏は、仲間が何人も戦死するのを目撃した。だが、自分が敵に与えたり、自ら被ったりした恐怖についてはいまだ口を閉ざしている。「さまざまな経験をしてきた」とだけ語った。

 濃い顎ひげを生やし、黒色のターバンを巻いた外見はタリバン戦闘員そのものだが、ムワファク氏はタリバンとしては型破りだ。

 タリバンはアフガン全土で、公共の場所から女性を事実上排除した。女性は中等教育からも締め出され、多くが職場から追われた。

 だが、マイマナ市役所では、女性は働き続けている。市立公園の利用も認められている。

 1996~2001年のタリバン政権下では、女性にブルカ(全身を覆う衣服)の着用が義務付けられた。現在、宗教警察はブルカの着用を命じてはいないが、首都カブールでは女性は顔を覆うよう命じた。

 マイマナ市の人事部門責任者、カヘラさん(26)はタリバンの命令に従ってヒジャブ(頭と首を覆うスカーフ)を身に着けている。「どのような服装をしろとは(ここでは)言われない」と語った。(c)AFP/Elise BLANCHARD