【3月12日 AFP】ウクライナを侵攻したロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は先月末、核戦力を「特別態勢」に移すよう指示した。このことで改めて突き付けられたのは、プーチン氏が率いているのは、専門家によれば核兵器の保有数が世界最多とされる国であるということだ。

 ロシアの核戦力と、想定され得る攻撃についてまとめた。

■世界最多の核弾頭

 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によれば、ロシアが保有している核弾頭は世界最多の6255発。米国は5550発、中国は350発、フランスは290発とされる。ただし、作戦配備されている核弾頭はロシアより米国の方が多い。

 ノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の報告書によると、ロシアは2020年、核兵器の製造と保守管理に80億ドル(約9350億円)を費やした。

■指揮系統

 ロシア憲法では、核兵器の管理は大統領に委ねられているが、使用命令の伝達および認証には国防相と軍参謀総長の関与が必要とされる。

 だが実際に大統領が核兵器の使用を命じた場合、具体的にどのような展開になるかは「分からない」と、ロシアの独立系軍事専門家パベル・ポドビッグ(Pavel Podvig)氏は言う。

 国防相と参謀総長に「拒否権はないが、それでも何らかの討議のプロセスはある」として、「大統領のテーブルの上に(核の)ボタンがあるわけではなく、手順を踏まなければならない」と説明した。

 仮に核攻撃の命令が下されても、軍が従うかどうかにも疑問の余地がある。

 シンクタンク「リドル(Riddle)」でロシアの軍事問題を専門とし、モスクワを拠点に活動するパベル・ルージン(Pavel Luzin)氏は「軍部は分別がないわけでも、偏狭なわけでもない」と指摘する。

 ロシア政府関係者の間でも、核戦争を仕掛ければ、得るものより失うものの方がはるかに大きいという欧米の専門家に同意する見方は多いはずだ。

 米スタンフォード大学(Stanford University)の国際安全保障協力センター(Center for International Security and Cooperation)のクリスティン・ベン・ブルースガード(Kristin Ven Bruusgaard)氏は、「個人的には、ロシア軍のエリートがウクライナ国内または周辺で核を限定的に使用する案に大賛成するとは思えない」とツイッター(Twitter)に投稿。

「だが、それが有効な策とならない可能性を、プーチン氏に伝える人物はいないのではないだろうか」と付け加えた。