【3月7日 AFP】ウクライナの首都キエフ西郊の町イルピン(Irpin)。数日間にわたる砲撃で、がれきがあちこちでくすぶっている。ここから脱出を試みる家族がいた。

 まだ幼い末っ子は、スパイダーマン(Spiderman)の帽子をかぶり、スクールバッグを背負っている。父親の手を握り、爆撃されたコンクリート製の橋の下に渡された板の上を慎重に歩いて川を渡った。

 上の男の子は猫を脇に抱え、スーツケースを苦労しながら運んでいた。両親もたくさんのかばんを持っている。

 川の向こうでは、ウクライナ兵が土手を上るのを手伝っていた。

 その時、砲撃が起こった。砲弾の一つが100メートルしか離れていない場所に落下し、煙が上がった。

 土手を上ると、一家は恐怖に震えながら走った。避難してきた人の受け入れ施設に行く白いバンが止まっている場所まで、あと500メートルだ。

 バンにたどり着いたスパイダーマン帽をかぶった男の子は、道に横たわる2人の遺体に目をやった。ちょうど毛布が掛けられたところだった。

 犠牲となった2人も、一家と同じルートをたどってここまで来た。数分前にバンのすぐ横でロシア軍の攻撃を受け、死亡した。

 一人はあおむけに倒れ、すぐそばにはスーツケースが立っていた。もう一人の横には猫用ケージがあったが、猫の気配はなかった。

 スパイダーマン帽の男の子と兄、両親が乗り込むと、バンは走りだした。

 1キロ先の避難民受け入れセンターに到着した。ここから黄色いスクールバスで駅へ行き、西に向かう電車に乗る計画だ。

 今のところ、一家は全員無事だ。(c)AFP