【2月9日 東方新報】中国で酒といえば代表的なのが白酒。コーリャン、トウモロコシ、甘藷(かんしょ)などを原料とした蒸留酒で、日本では茅台(マオタイ)酒が有名だ。アルコール度数は50度以上が多く、65度も珍しくない。しかし中国の若者の間で急激に白酒離れが進み、低アルコール飲料が人気となっている。

 中国国家統計局によると、白酒の生産量は2016年の1358万キロをピークに減少に転じ、2021年は715万キロと、5年間で半減近くになった。その分伸びているのが、リキュール、カクテル、果実酒、ソーダ酒などの低アルコール飲料だ。

 中国で酒席と言えば、小さなグラスに50度以上の白酒を注ぎ、一杯ごとに「乾杯」と言ってグラスを重ね、文字通り一気に飲み干すのが伝統的な飲み方。最後の方はかなり酩酊(めいてい)するが、それでも何事もないかのように振る舞うのが大人の漢(おとこ)だ。

 だが、「90後(1990年代生まれ)」の若者の間では、低アルコール飲料を飲んで「微醺(ほろ酔い)」を楽しむのが新しい文化となっている。ある統計では、90後の若者で「白酒を飲む」という人はわずか5%。オヤジ同士で白酒を浴びるように飲むのでなく、女性も交えて低アルコール飲料をたしなむライフスタイルが広まっている。低アルコール飲料の消費者は18~30歳(中国は18歳から飲酒できる)が70%を占め、半数以上が女性だ。中国で18~34歳の女性は3億人近く、高等教育を受けている割合が多く、消費力も旺盛だ。

 こうした若者や女性をターゲットにした低アルコール飲料ブランド「十点一刻(Momenten)」「貝瑞甜心(MissBerry)」などが次々と登場。健康志向が強い18~30歳向けの「糖質ゼロの発泡酒」も発売されている。中国最大のオンラインモール「天猫(Tmall)」で販売されている低アルコール商品は5000種を超えている。

 こうした流れに老舗の白酒メーカーも対応しようとしている。茅台酒を手がける中国最大手の白酒メーカー、貴州茅台酒(Kweichow Moutai)グループは2017年に低アルコールカクテル「悠蜜(Umeet)」を発売し、ブルーベリーを原料とするリキュールや発酵酒を次々と開発。同じく白酒の老舗、瀘州老窖(Luzhoulaojiao)もフルーツワイン会社を立ち上げ、江小白(Jiangxiaobai)もワインと同程度のアルコール度数12度の青梅酒を発売している。

 中国工業情報化部は1月10日、国内の消費財メーカーに対し、海外にも通用する「革新的製品」の開発を促すガイドライン案を提示した。具体例として、コンピューター制御の炊飯器、位置特定機能が付いた子どもや高齢者向けの靴とともに「若年向け低アルコール飲料」を挙げた。ビールの粗利益率が一般的に40%前後に比べ、低アルコール飲料は70%前後に上るというデータもある。今後、中国で低アルコール業界の競争がさらに激しくなりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News