【3月8日 AFP】仕事を失い、借金まみれになり、子どもを養うためには腎臓を売るしかない──こう思い詰めるアフガニスタン人が増えている。

 昨年8月にイスラム主義組織タリバン(Taliban)が実権を握って以降、アフガニスタンは金融危機に陥り、数十年に及ぶ紛争で人道危機が悪化している。

 工場で働いていたヌルディンさんはタリバン復権直後に給与を大幅カットされたため、仕事を辞めた。もっと条件の良い職場があると思ったからだが、間違いだった。失業者を何十万人も抱えた国で、次の仕事は見つからなかった。

 切羽詰まったヌルディンさんは、手っ取り早い金策として腎臓の片方を売った。「今は後悔している」と話す。「もう働けない。痛いし、重い物は持てない」

 一家は今、12歳の息子に家計を頼っている。靴磨きで稼げるのは、1日たった70セント(約80円)だ。

■一個17万円

 AFPは、家族を養うためや借金返済のために腎臓を売ったという8人に話を聞いた。腎臓一つと引き換えに得た金額は、わずか1500ドル(約17万円)だったという人もいた。

 アフガニスタンには臓器売買に関する規制はない。北部マザリシャリフ(Mazar-i-Sharif)の病院で名の知られた外科医だったモハンマド・ワキル・マティン(Mohammad Wakil Matin)教授は、「法律がない」とした上で、臓器提供・売買には「ドナー(提供者)の同意が必要だ」と説明した。

 ヘラートで臓器移植の多くを手掛ける病院の外科に勤めるモハマド・バシル・オスマニ(Mohamad Bassir Osmani)医師も、同意が重要だと指摘。ドナーから「書面と動画で同意を得ている」と語った。ただ、病院側が患者やドナーの身元や臓器提供の経緯を調査することはないという。

 金の工面に困った人は、ブローカーを介して裕福な患者と引き合わされる。患者は国内各地の他、インドやパキスタンからもやって来る。臓器移植にかかる費用とドナーへの謝礼金は、患者が支払う。

 3人の子どもに十分な食事を与えられず、うち2人が栄養失調と診断され治療を受けているというアジタさんは、25万アフガニ(約32万円)で腎臓を売ったという。今度は、日雇いで働く夫が腎臓を売ろうとしている。「人々は貧しくなった」「絶望の末に腎臓を売っている人も多い」と夫は話した。