【3月2日 AFP】ロシア南西部のロストフナドヌー(Rostov-on-Don)。ウクライナとの国境に近いこの町で、若者がロシアのウクライナ侵攻に対するひそかな抗議活動を行っている。

 中心部の広場には、ヘッドホンを着けた数人の若者がそこここに所在なさそうにたたずんでいるだけだ。警察官の注意を引かないように。抗議デモには見えない。

 しかし、若者たちはSNSの呼び掛けに応じて集まったのだ。

 寒さの中、1時間立ち続けた。目配せし合うと、さりげなく数人ずつ固まり、少しだけ言葉を交わした。スローガンもプラカードもシュプレヒコールもない。

 長時間同じ場所にいると、警察官に身分証の提示を求められる。

 ジャーナリストは身分証を念入りに調べられ、コピーを取られる。マイクを取り出せばすぐ、私服の治安要員が近寄ってくる。

 首都モスクワやサンクトペテルブルク(St Petersburg)などの大都市では、ウクライナ侵攻に抗議する大規模なデモが行われた。拘束された参加者も数千人に上る。

 ロストフナドヌーでは、大勢を招集するわけにはいかない。抗議デモに参加する用意がある人は一握りだが、覚悟が必要で、恐怖心もある。

 コーヒーカップで手を温めていた、劇場の技術者として働くニコライ・コワシェビッチ(Nikolai Kovaschevich)さん(30)が取材に応じてくれた。

「核兵器で世界を脅してもどうにもならない」

「おしまいだ。未来はない。子どもも生まれてこないだろう。あすはこない」と憤りを見せた。

 コワシェビッチさんのパートナーで、ビデオブロガーのマルガリータ・ハイシュバシェワ(Margarita Khaishbasheva)さん(29)は「みんなおびえている。刑務所に入れられたり、払えないほど高い罰金を科されたりするのを恐れている」と、声を荒らげた。

「私たちは警察国家に住んでいる。強い恐怖の中で暮らしている」