【2月24日 AFP】「避難するように言ったのに」──ウクライナ東部の町チュグエフ(Chuguiv)で、父親の遺体の近くで30代の男性は泣き崩れた。24日未明、この町の住宅街にミサイルが着弾して死者が出て、市民はロシア軍の侵攻でたたき起こされた。

 近くには車の残骸が転がり、女性が空に向かって呪いの言葉を叫んでいた。5階建ての集合住宅2棟の間に、直径4~5メートルの穴ができた。消防隊は、懸命の消火活動を続けていた。

 通り沿いでは他にも複数の建物が大きな被害を受けた。窓は粉々に割れ、外れた玄関扉がいてつく朝の空気の中で揺れていた。

 地元住民のセルゲイさん(67)は、ミサイルはウクライナ第2の都市ハリコフ(Kharkiv)近郊の軍用飛行場を狙ったのではないかという。そこは、ロシア国境から約40キロしか離れていない。ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が挙げた標的の一つだ。

 セルゲイさんは、打ち身であざができたが大丈夫だとAFPに語り、「ここにとどまる。娘は(首都)キエフにいるが、あちらも状況は同じだ」と続けた。

 警察によると、このミサイル攻撃の犠牲者数はまだ確認できていない。

 猫を抱いた10代の少女アナスタシアさんは、車椅子の祖父が避難するため、バスに乗せてもらう様子を見守りながら「こんなことになるなんて思いもしなかった」と嘆いた。バスは近くの村へ向かう。「そこでなら戦争から逃れられるかもしれない」

 ウクライナ東部の前線付近では、ロシア軍が「全面侵攻」を開始したとの報を受け、民間人や軍関係者が対応に追われた。

 チュグエフから南に300キロ離れた港湾都市マリウポリ(Mariupol)では、戦闘が激化する中、当局が市民の避難を急いだ。ただ、地元当局者は、2地区の住民を鉄道駅に誘導しているが、それ以外の場所では「激しい砲撃にさらされている」ため、人々を避難させることができずにいるとAFPに話した。

 人道支援団体プロリスカ(Proliska)のエフゲニー・カプリン(Yevgeny Kaplin)代表は、ルガンスク(Lugansk)州とドネツク(Donetsk)州の親ロシア派勢力との前線全体が攻撃を受けているとし、「あちこちで戦闘が起きている。この地域では通信手段がなく、犠牲者に関する情報が得られていない」と述べた。(c)AFP/Thibaut MARCHAND with Yulia Silina in Mariupol