【2月23日 AFP】ウクライナ東部ルガンスク(Lugansk)州の政府軍と親ロシア派武装勢力がにらみ合う最前線で、年金を頼りに暮らすライサ・シマノブナ(Raisa Simanovna)さん(90)は、夜こそアパートの自室で眠るが、激しさを増す砲撃から身を守るため、日中は地下シェルターに避難している。

 シマノブナさんが暮らすスチャースチイェ(Schastya)は政府側が掌握する地域にある。「幸福」を意味する町に流れる川に架かる橋は新型コロナウイルス対策の規制で封鎖されるまで、政府側と親ロ派側を結ぶ数少ない渡河点の一つとなっていた。

 しかし、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が親ロ派支配地域の独立を承認し、同地へのロシア軍駐留を命じたことで、再び戦闘の最前線となった。

 シマノブナさんは深紅のスカーフで顔を覆い、懐中電灯を手に地下シェルターに下りながら「みんないつ戦争になってもおかしくないと思っている」と語った。

 シマノブナさんが暮らす旧ソ連時代に建てられたアパートは、境界の川につながる運河に面している。町の電力供給設備が被弾したため、電気も暖房も水道も止まっている。10室中7室の住民は避難したが、シマノブナさんら行く当てのない3室の住民が残されている。

 スチャースチイェは21日から22日にかけての夜に砲撃を受けた。ワレンティナ・シュマトコワ(Valentina Shmatkova)さん(59)は、2部屋あるアパートの窓ガラスすべてが割れる音で目を覚ましたという。

 シュマトコワさんは部屋を片付けながら「こんな事態になろうとは予想だにしなかった。ウクライナとロシアが合意できないだなんて」「紛争になるとは思わなかった。ウクライナとロシアの大統領は賢明で合理的だと思っていた」と述べた。

 プーチン氏の独立承認についてどう思うかを尋ねると、シュマトコワさんは「何が起きているのかさっぱり分からない。明かりも電気も何もないのだから!」と笑って答えた。(c)AFP/Thibaut MARCHAND