【2月23日 AFP】欧米諸国は22日、ロシアがウクライナ東部の一部地域の独立を承認したのを受け、対ロシア制裁の第一弾に踏み切った。だが今のところ、効果は限定的とみられている。欧米諸国への影響も軽微なものにとどまる見通しだ。

 現在の制裁はロシアの金融部門を標的にしたもので、「エネルギー部門を対象から外し、段階的な手段を取るという戦略に沿っている」と、法律事務所アシャースト(Ashurst)の経済制裁専門の弁護士、オリビエ・ドーガンス(Olivier Dorgans)氏は指摘する。

■ロシアは事前に対策

 ドーガンス氏は米国や欧州連合(EU)、英国による金融制裁について、ロシアは事前に対策を講じており、資金は既に本国に戻されていると語った。

 オリガルヒ(新興財閥)と個人を対象とした資産凍結も、ロシア経済全体に与える影響は限られたものになる見込みだ。

 欧州中央銀行(ECB)高官によると、欧米諸国の銀行のロシア向け投融資残高も限られている。

 それでも欧米諸国は、資金調達や債務の借り換えのための資本市場へのアクセスを遮断することで、金融分野でロシアを締め上げようとしている。そうした手段により、通貨ルーブルの価値は下がり、市民の購買力は低下、輸入品の購入が困難になるとみられる。

 ただ、米国は、国際銀行間通信協会(SWIFT、スイフト)の決済網からロシアを排除するといった、同国経済を損なう可能性がある制裁は控えている。主要ハイテク機器やソフトウエアの輸出規制も発動していない。

■エネルギー部門を除外

 欧米諸国は制裁対象として、エネルギー部門は今のところ除外している。まだ稼働していない、ロシア産の天然ガスをドイツに輸送するパイプライン「ノルドストリーム2(Nord Stream 2)」計画をドイツが象徴的に停止したにとどまる。

 ドーガンス氏は「急所を突くような制裁にまでは至っていない。欧州としても域内の経済的利益を守ることで一貫している」と説明した。

 米ワシントンを拠点とする戦略国際問題研究所(CSIS)のロシア専門家、アンドルー・ローセン(Andrew Lohsen)氏は、現在の制裁はジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領の言動とは裏腹に、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領を勇気づけるものになっていると指摘。「ロシアに方針転換を強いる類いのものではない」と語った。(c)AFP/Marie HEUCLIN / Ali BEKHTAOUI