【2月9日 東方新報】北京冬季五輪を巡っては、各国の首脳が参加しない「外交ボイコット」が話題になったが、ふたを開けてみれば2月4日の開会式には20か国以上の首脳が参加した。同じコロナ禍で開かれた昨年夏の東京五輪よりはるかに多くの国家元首が開会式に集結した。

 参加した首脳を見渡すと、当然ながら中国との政治的・経済的結びつきが深い国が多い。米国への対抗で結束が強いロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領や対インドで長年の盟友関係にあるパキスタンのイムラン・カーン(Imran Khan)首相が代表的だ。

 欧州からは、中国と経済的関係が強くなっているポーランドのアンジェイ・ドゥダ(Andrzej Duda)大統領や、中国が新型コロナウイルスでいち早く医療支援を行ったセルビアのアレクサンダル・ブチッチ(Aleksandar Vucic)大統領が参加。東南アジアでは、中国との経済協力が進むカンボジアのノロドム・シハモニ(Norodom Sihamoni)国王が参加。王族ではルクセンブルクのアンリ(Henri)大公、モナコのアルベール2世公(Prince Albert II)、タイのシリントン王女(Princess Sirindhorn)も出席している。

 南米ではアルゼンチンとエクアドルの大統領が参加。アルゼンチンは中国と農業、インフラ、エネルギーなどの貿易が活発で、同国のパタゴニア地方には直径35メートルの巨大アンテナを備えた中国初の宇宙探査研究センターが建設されている。

 中央アジアからは、中国のユーラシア圏貿易構想「一帯一路」の恩恵を受けているカザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメンの大統領が出席。中東では、五輪に選手を派遣していないエジプト、カタール、アラブ首長国連邦アブダビ首長国から大統領や首長、皇太子が参加している。このほか、シンガポールの大統領、モンゴルとパプアニューギニアの首相も開会式に駆けつけた。

 東京五輪の開会式に出席した元首は、2024年パリ五輪を控えたフランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領やモンゴルのロヴサンナムスライ・オヨーンエルデネ(Luvsannamsrai Oyun-Erdene)首相にとどまった。北京に多くの元首が集まった背景にはもちろん、面子(メンツ)を重んじる中国が各国に積極的に働きかけた面がある。ただ、それを分かっているからこそ米国や英国は「外交ボイコット」を呼びかけたわけだが、明確に同じ姿勢を表明したのはリトアニア、デンマーク、カナダ、オーストラリアなど少数にとどまった。オランダやラトビア、ニュージーランドなどは政府首脳を派遣しない理由を「新型コロナウイルスのため」と表明し、スウェーデンはわざわざ「これは外交的ボイコットではない。わが国は東京五輪にも新型コロナのため政府関係者を派遣していない」と表明している。

 日本政府は首脳を派遣しなかったが「外交ボイコット」という言葉は使わないようにしており、参院議員でもある橋本聖子(Seiko Hashimoto)東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長らを派遣している。各国とも北京冬季五輪の「前哨戦」のように、開会式で微妙な駆け引きを演じていた。(c)東方新報/AFPBB News