【2月10日 東方新報】近年、高い興行成績が続く中国映画界。その最も稼げる時期が春節(旧正月、Lunar New Year)の連休期間で、映画会社は春節に大作やヒットが見込める映画を当ててくる。今年の春節の2月1日、中国全土の映画館の興行収入は15億元(約272億円)を超え、1日の売り上げとして歴代2位の記録となった。

 最大のヒット作は『長津湖之水門橋(英題:The Battle at Lake Changjin II)』。朝鮮戦争で中国の人民義勇軍が米軍主体の国連軍と戦った「長津湖の戦い」(1950年)を描いた大作『長津湖(英題:The Battle at Lake Changjin)』の続編で、1日だけで興行収入は6億6500万元(約120億円)に達した。昨年秋公開の『長津湖』は歴代最高の57億6000万元(約1047億円)を稼いでおり、続編は記録を更新する可能性がある。

 さらに、オートバイを巡る人間ドラマ『四海(英題:Only Fools Rush In)』が2億3400万元(約42億円)、コメディー映画『這個殺手不太冷静(英題:Too Cool To Kill)』が2億1700万元(約39億円)、若者たちの起業ストーリー『奇跡 笨小孩(英題:Nice View)』が1億8900万元(約34億円)、人気アニメシリーズ『熊出没 重返地球(英題:Boonie Bears:Back To Earth)』が1億1000万元(約20億円)と続いた。

 一方、中国映画界の巨匠・張芸謀(Zhang Yimou、チャン・イーモウ)監督が長女の張末(Zhang Mo、チャン・モー)氏と親子タッグを組んだ話題作『狙撃手』も上映されているが、朝鮮戦争で国連軍と死闘を演じた人民義勇軍の狙撃手を描いたストーリーが「長津湖之水門橋」とテーマが重なり、客足は伸び悩んでいる。

 昨年の春節期間は、東京を舞台にして妻夫木聡(Satoshi Tsumabuki)さん、長澤まさみ(Masami Nagasawa)さんらも出演したコメディー映画『唐人街探案3(邦題:僕はチャイナタウンの名探偵3)』や、人気女性コメディアンの賈玲(Jia Ling)さんが監督をした『你好、李煥英(英題:Hi, Mom)』などのヒットで、合計78億元(約1415億円)を超えた。

 中国全土の映画館のスクリーン数は増え続け8万面を超え、世界一をキープ。今年の春節期間の売り上げは昨年を上回る勢いだ。

 ただ、今年の好業績は、入場料金の値上げという「上げ底」の面もある。2月1日の全国平均料金は58.7元(約1064円)で、昨年の平均料金49.1元(約890円)から約20%値上げ。都市部の大スクリーン館では100元(約1813円)を超えることもある。

 その一因は、新型コロナウイルスにある。感染予防対策として映画館の入場者数を75%以下にすることや、感染リスクが中・高程度の地域は映画館を一時閉鎖するなどの厳格な条件があり、その分を値上げにより回収しようとしている。映画業界は「史上最高収入の春節になる」と沸いているが、市民の間からは「入場料が史上最高の春節になった」と不満も出ている。(c)東方新報/AFPBB News