【2月8日 AFP】北京冬季五輪アイスホッケー中国代表の元外国籍の選手たちにとって、開催国のユニホームを着ることは、単に新しいユニホームに着替えるというだけではない。未知の言語、異国の文化、さらには名前まで変えることを意味する。

 北米アイスホッケーリーグ(NHL)の伝説的選手クリス・チェリオス(Chris Chelios)を父に持ち、自身もかつてNHLのデトロイト・レッドウィングス(Detroit Red Wings)に所属していたジェーク・チェリオス(Jake Chelios、28)のように、こうした状況に少し圧倒されている選手もいる。

 米シカゴ生まれのチェリオスは、「傑克凱利奥斯」という中国名を得た。ただ、中国語は「2、3個の単語しか分からない」と話す。「高校で6年間スペイン語を学んだけれど、習得できなかった。だから(中国語は)挑戦してみようとも思わなかった」

 10日に初戦の米国戦に臨む中国男子代表チームは、選手の半数以上が外国出身。多くはカナダ出身者だ。

 開催国枠で出場する中国は、男子1次リーグで強豪国のカナダ、米国、前回大会銀メダルのドイツと同じ「死のグループ」に入った。その上、チームの競技力が五輪の水準に満たないとして国際アイスホッケー連盟(IIHF)から出場権をはく奪される可能性さえあった。

 だが、思いがけない幸運が舞い込んだ。NHLは昨年12月、新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、北京五輪に所属選手は参加しないと発表。中国が初戦で屈辱的な大敗を喫する恐れは低くなった。とはいえ中国は1勝するのも難しいとみられている。

 それでも、ゴールキーパーの「傑瑞米史密斯」ことジェレミー・スミス(Jeremy Smith、32)は、中国の環境に慣れるだけでやりがいは十分あると語る。

 元NHL選手で、北京に来てからは自由時間に妻と万里の長城(Great Wall)などを観光したというスミスは、「中国や北京の文化と歴史を理解するのは難しい」と述べた。「北京には数千年もの歴史があり、それは理解できるものではない」

 元外国籍の選手の多用は、中国国内でも物議を醸している。その大きな理由に、中国が二重国籍を認めていないことがある。中国当局も選手も、代表選出過程においてどんな手続きが取られたかを公にしてはいない。

 いずれにせよ、五輪出場の機会は選手にとって見逃せないものだとチェリオスは言う。スミスも、特に中国ではホッケーの歴史は浅く「まかれたばかりの小さな種」だとし、「その一部になれるなんて光栄だ。とてもクールだ」と話した。

 中国名を持つことについても、チェリオスは「とても気に入っている。ここ(中国)に住むという経験の一部だ。何もかもが新鮮なんだ」と語った。(c)AFP