【2月7日 AFP】中東オマーンはこのほど、伝統衣装「ディシュダーシャ」を外国製の模倣品や斬新な着崩しから守るため、厳格な基準を設けると発表した。違反者には高額の罰金を科す。

 ディシュダーシャはスルタン国オマーン独特の優雅な長衣。着丈が足首まである点は他の湾岸諸国の民族衣装と似ているが、襟ぐりから胸元の合わせにかけて施された精緻な刺繍(ししゅう)を特徴とする。だが、最近では裾上げや凝った大ぶりな刺繍を施したもの、多色使いの製品を好んで着る人が増えていた。

 商工業・投資振興省は、ディシュダーシャのデザインに「一定の基準」を定め、素材は綿を中心に、刺繍は襟ぐり、胸元の合わせ、袖口のみに限定すると発表した。「生地は単色でなければならない」と同省関係者はAFPに述べ、白か淡い色合いが好ましいとした。

 この基準に違反した人や製造業者には、罰金1000リアル(約30万円)を科す。違反2度目の場合は罰金額が倍になる。

 保守的なオマーンでは当局への批判は珍しい。首都マスカットでは今回の政府発表について、個人の自由の侵害に当たると思われるが国家のアイデンティティーを守る必要がある点は理解するとの声が聞かれた。

 経済学者のハルファン・トゥキ(Khalfan al-Touqi)氏はディシュダーシャについて、「経済的にも大きな意味を持つ」と指摘。「最近は、中国やインドなどからディシュダーシャを輸入して販売する業者が増えている。こうした外国製品は、手を加えられていることが多い」とし、新しい規制には小売業者にオマーン製品の買い付けを奨励する意図もあると説明した。(c)AFP/Khaled Orabi with Aziz El Massassi in Dubai