【2月6日 AFP】米ニューヨークの国連(UN)本部の壁から突然撤去され、関係者を当惑させていたスペインの巨匠パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)の傑作「ゲルニカ(Guernica)」のタペストリーが5日、所有者のロックフェラー(Rockefeller)家によって約1年ぶりに元の場所に戻された。

 国連情報筋によると、幅7.5メートルの巨大なタペストリーは5日朝、各国首脳や大使が通る安全保障理事会(UN Security Council)議場前に再び飾られた。外交官たちからは安堵(あんど)の声が聞かれた。

「ゲルニカ」は、スペイン内戦(Spanish Civil War)中の1937年4月26日に北部バスク地方の町ゲルニカで、ナチス・ドイツ(Nazi)とイタリアのファシスト政権が行った無差別爆撃を描いた作品。

 タペストリーは1955年、ネルソン・A・ロックフェラー(Nelson A. Rockefeller)氏がピカソに相談の上でフランスの工房に制作を依頼。ロックフェラー家から国連に貸与され、外交関係者に戦争の悲惨さを強く思い起こさせる反戦の象徴となっていた。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて国連職員の多くが在宅勤務せざるを得なくなっていた昨年2月、タペストリーは説明もなく撤去され、突然のことに驚いたアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)国連事務総長が「ひどい、とんでもないことだ。タペストリーがなくなってしまった」と述べていた。

 ネルソン・ロックフェラー・ジュニア(Nelson Rockefeller Jr.)氏は、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に5日掲載されたインタビューで「伝達ミス」があったと認め、撤去はタペストリーに洗浄と保存処理が必要だったためだと示唆した。(c)AFP