【2月6日 AFP】十字マークの付いた鮮やかなオレンジ色のジャケットを着た中国人医師の一団が、背中の重い医療用バッグをものともせず急斜面のコースを滑り降りてゆく。北京冬季五輪のスキー競技で負傷した選手を一刻も早く救助する任務を帯び、中国で初めて専門の訓練を積んだ救急医療チームだ。

 中国でウインタースポーツはまだ新しく、五輪医療スタッフの多くもつい最近までアマチュアスキーヤーにすぎなかった。

「訓練は簡単ではなかった」と、首都有数の医療機関である北京協和医院(Peking Union Medical College Hospital)の整形外科医、李其一(Li Qiyi)医師(49)は振り返る。「気温が氷点下20度や30度まで下がることもあり、体感温度はもっと寒く感じる。足や顔に凍傷を負ったメンバーもいた」

 医師たちには、事故発生から4分以内に選手のもとへ駆け付けることが求められている。選手が大けがをした場合、最初の数分間が救命のカギを握る。

 中国当局は2018年、北京周辺の病院に呼び掛けて冬季五輪の医師ボランティアを募った。スキー経験が少しでもあることが応募条件の一つだった。

 総勢40人余りの医療チームは4年間、毎年4~5週間の訓練を受け、スキーのエッジを立てて急斜面を安全に下る方法や、凍った斜面でのアイゼンの使い方などを教わってきた。

 北京積水潭医院(Beijing Jishuitan Hospital)の麻酔科医(39)は、スキーの腕前には自信があったが、訓練が始まってみると「自分のレベルはまだまだだと実感した」と言う。「皆、医師だから病院での救命救急には慣れている。でも、スキー競技のコースは極寒の斜面で、環境がまったく違う」

 アルペンスキーの滑降競技では、最高時速は140キロに達し、壮絶な転倒事故も起こり得る。「私たちはコースの最も危険な地点で待機し、緊急事態に備えている」とこの医師は語った。(c)AFP/Ludovic EHRET