【2月12日 AFP】遺伝子操作されたブタの心臓を人間に移植する世界初の手術の陰には、パキスタン出身の外科医の存在があった。ムハンマド・マンスール・モヒウディン(Muhammad Mansoor Mohiuddin)氏は、医大生の頃から友人や同窓生の間で、いずれ大事を成すと思われていた。

 カラチ(Karachi)生まれのモヒウディン氏が、米メリーランド大学医学部(University of Maryland Medical School)で種を超えた臓器提供、いわゆる「異種移植」のプログラムを立ち上げた一人としてマスコミの注目を浴びたのは1月上旬。同大の医療チームは、重病を抱えた米国人男性に、遺伝子操作されたブタの心臓を移植する手術に見事成功した。

 友人たちが記憶するモヒウディン氏は、医学への情熱を燃やす優秀な学生だった。1980年代、カラチにあるダウ医科大学(Dow Medical College)で共に学んだムニール・アマヌラ(Muneer Amanullah)氏は、「彼は外科手術への関心が高く、いつ何時でも手術に立ち会えるよう待機していた」と語る。

 モヒウディン氏の快挙によって、同医科大学のキャンパスは沸き立ったと、副学長のムハンマド・サイード・クレシ(Muhammad Saeed Qureshi)氏はAFPに語った。「卒業生があのような偉業を成し遂げたのだと、誰もが興奮冷めやらぬ様子でした」

■異種移植への長い道のり

 モヒウディン氏は、今回の移植を成功させたメリーランド大の医療チーム50人全員をたたえた。

「皆、それぞれの分野のエキスパートです」と同氏はAFPの電話取材で述べた。「最高の外科医であり、最高の内科医であり、最高の麻酔科医です」

 ブタの心臓を移植された患者については経過観察が続けられているが、今回の手術は動物から人間への移植に大きな一歩を踏み出した。

 統計によると、現在臓器移植を待っている米国人は約11万人いるが、毎年6000人以上が移植を受けられないまま死亡している。

 需要に応えるため、医師たちは異種移植に長い間、関心を持ってきた。「私たちは、この手法を確立するために18年を費やしました」とモヒウディン氏は言う。