【1月30日 AFP】ウクライナの首都キエフにある自宅アパートのダイニングルームで、3人の子の母親のマリアナ・ザグロ(Mariana Zhaglo)さん(52)はカーキ色のケースから小銃を取り出した。国境付近に集結したロシア軍による侵攻の懸念が高まる中、祖国を守るため戦う覚悟があるという。

 ザグロさんは領土防衛軍の予備役だ。「ロシア軍が来るのを待つのではなく、彼らの記憶に刻まれるような出迎えの準備をしている」と語る。普段はマーケティング関係の仕事をしており、夫は軍に勤めている。

「私だけではない。私のような女性がウクライナには大勢いる」「女性は家族や子どもを守るためなら、男性がやらないことをやってのける。手ごわい戦力だ」と話すザグロさんには、成人した娘2人と12歳の息子がいる。

 ザグロさんは昨年、ウクライナの銃器メーカーから小銃と戦闘用の追加装備一式を購入した。かかった費用は「2000~3000ドル(約23万~35万円)」で、欧州でも最も貧しい水準にあるウクライナでは大金だ。

 予備役には2年前に登録し、狙撃手として訓練を受けた。招集に備え、軍用バックパックにはすでに軍服やヘルメット、防弾チョッキ、手袋、膝当てなどを詰めてある。予備役仲間と共に、射撃や哨戒、待ち伏せの訓練も定期的に行っている。

 しかし、もしもの時に子どもたちをどうするかは、まだ決めていない。「もちろん、その点は心配している」

 最新の世論調査では、回答者の48%がロシアの侵攻はあり得ると答えた。ザグロさんはまだ戦争回避は可能だと望みを持っている。そして、現在の危機はロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領が抱く「帝国主義」の野望のせいだと非難する。

「ロシア国民に対して含むところはない。フランス人やドイツ人、中国人に対してと変わらない」というが、ウクライナが侵攻された時には銃を手にする用意はできている。

「人を殺したいのではない。ただ、私の家を守るだけだ」とザグロさんは訴えた。(c)AFP/Ania TSOUKANOVA