【12月29日 AFP】ウクライナの首都キエフ郊外の森で、迷彩服に身を包んだ予備役にロシア兵役が襲いかかる。予備役はカラシニコフ(Kalashnikov)銃の模型で応戦。周りでは模擬発煙弾が発射される。

 緊急時に招集される予備役には、建築家や研究者、学生などさまざまな市民が登録している。

 19歳の大学生、ダニール・ラリン(Daniil Larin)さんは休憩中にAFPの取材に応じ、「敵が攻めてきたら(中略)何をすべきか国民全員が知っておくべきだ」と話した。

 ラリンさんら50人は12月のある日、ロシアの侵攻を想定した訓練を行うため、キエフ郊外の閉鎖された旧ソ連時代のアスファルト工場に集まった。

 ウクライナ政府によると、ロシアは国境付近に約10万人の部隊を集結させている。大規模侵攻への懸念が増す中、ここ数か月で新たに数十人が予備役に志願し、現在10万人近くまで増えている。

 ウクライナ軍の総兵力は21万5000人。ロシアの支援を受ける分離派が支配する2地域で、2014年から戦闘が続いている。これまでに1万3000人以上が犠牲となった。

 ロシア政府は、ウクライナへの侵攻を否定している。ウクライナは米国が主導する北大西洋条約機構(NATO)への加盟を望んでいるが、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、NATOが東方に拡大したら軍事行動も辞さないとしている。

 医師のマルタ・ユズキフ(Marta Yuzkiv)さん(51)は、ロシア軍はウクライナ軍よりもはるかに優れていて、全面侵攻が起きる可能性は「十分ある」と考えている。4月に入隊して以来、毎週土曜日に数時間、事態対処医療や自動小銃の撃ち方、検問所の設置などの訓練を受けている。

 軍服は支給されたが、ヘルメット、防弾チョッキ、戦闘用ゴーグルは自分で用意した。

 この日訓練を受けていたのは、キエフが攻撃を受けた際、町の防衛に当たる予備役の大隊だ。

 大隊司令官の一人、バディム・オジルニー(Vadym Ozirny)氏によると、有事に予備役は決められた場所に集合し、武器を受け取り、主要な建物やインフラ施設の防衛や市民の避難支援に当たる。

 同大隊のベテランの一人、建築家のデニス・セミログオルリク(Denys Semyrog-Orlyk)さん(46)はAFPに対し「顔に一発食らわせない限り、ロシアはウクライナから手を引かないだろうと思って8年間生きている」と語った。(c)AFP/Dmytro GORSHKOV