■世界から切り離されて

 若者たちが身構えているのは、事態の深刻化を懸念するからだけではない。分離派地域の政治指導者が下した新しい布告に従い、最前線へ派遣される可能性があるからだ。

 分離派当局は昨年、18歳での6か月間の兵役義務を導入した。チェボタイエフさんは「心の準備はできている」ものの、大学進学により兵役が免除されることを望んでいると言う。

 ドネツクでは8年にわたって夜間外出禁止令が続いている。昨年、一時的に週末だけ解除されることがあったが、夜11時から朝5時まで屋外に出ることができない。

 ウクライナの他の地域の若者たちがナイトクラブで楽しんでいる間、ドネツクはゴーストタウンと化す。「僕は若い。夜は外に出かけたい。でもそれができません」とチェボタイエフさんは嘆く。「全く自由がないんです」

 分離派地域では、生活も一握りの企業によって支配されている。銀行も一つしかない。その銀行の口座がなければ、支払いはすべて現金だ。

 医学生のナスチャ・カルプシナ(Nastya Karpushina)さん(20)は「ロシアだって、銀行を選ぶことができるのに」と訴える。「オンラインでの買い物も、外国への注文もできません。暮らしが大変です」

 ウクライナ政府が統治している地域への移動はほぼ不可能なため、分離派地域の住民の多くは、ロシアを唯一の脱出経路とみている。とりわけ、ロシア政府がパスポート(旅券)の手続きを簡素化してからその考えは強まった。

「ここから出て行きたい」と医学生のチェボトクさん。ロシアのパスポートを申請し、アジアで医師として働きたいと言う。

「まだウクライナ(政府)側だった頃、もちろん私たちには未来への展望がありました。でも今は明らかに変わりました。残念でなりません」 (c)AFP