【1月24日 AFP】2015年11月に起きたパリ同時襲撃事件で撃たれた被害者のレントゲン写真を、フランスのベテラン整形外科医がデジタルアート作品として売ろうとしていたことが発覚した。ニュースサイト「メディアパルト(Mediapart)」が22日、報じた。

 メディアパルトによると、パリ南西部にある公立ジョルジュ・ポンピドー欧州病院(Georges Pompidou European Hospital)に勤務するエマニュエル・マスムジャン(Emmanuel Masmejean)医師は、NFT(非代替性トークン)化されたデジタル画像の販売サイト「オープンシー(OpenSea)」で、カラシニコフ銃の弾丸が残る前腕のX線画像を2446ユーロ(約31万円)で販売していた。患者の同意は得ていなかった。

 パリ公立病院連合(AP-HP)統括責任者のマルタン・イルシュ(Martin Hirsch)氏は22日、マスムジャン医師の「不名誉」で「恥ずべき」行為を刑事告発する方針だとツイッター(Twitter)で表明。医師としても懲戒処分を検討すると述べた。

 マスムジャン医師はメディアパルトの取材に、X線画像を販売したのは「間違い」だったと認め、患者に許諾を求めなかったことを後悔していると語った。販売は取り下げたとしているが、問題の画像は23日もオープンシー上で確認できた。

 患者の氏名は非公開だが、コンサートホール「バタクラン(Bataclan)」で米バンドのライブ観賞中に襲撃に遭い、恋人を亡くした若い女性だとされる。

 パリ同時襲撃事件では、3組の自爆犯と銃撃犯がバタクラン劇場のほかバーやレストランを襲撃し、130人が死亡した。マスムジャン医師は腕の負傷治療を専門とする経験豊富な外科医で、バタクランで被害に遭った女性5人の手術を担当したとオープンシーのページで自己紹介していた。

 NFTは、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を用いて本物であることを保証するデジタル資産。複製できないNFTアートには昨年から注目が集まるようになり、今や主な競売会社で高額取引され、100万ドル(約1億1000万円)以上の値が付くこともある。(c)AFP/Fabrice RANDOUX