中国の元エリート選手が指導、若年層の体力向上を政府奨励
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【1月29日 AFP】中国の元体操世界チャンピオン、スイ・ルー(Sui Lu)さんは、上海の大学の体育館の床に並べられたヨガマットの間に立ち、開脚前屈をする学生たちに励ましの声を掛けていた。小柄だが、威厳に満ちている。
スイさんは4歳の時、国家スポーツ育成機関に選抜され、エリート選手としてトレーニングを始めた。2011年に平均台で世界王者となり、翌年、ロンドン五輪の同種目で銀メダルを獲得した。
しかし、今教えている学生たちは、そんな野望は抱いていない。授業の内容は基本的なフィットネス。健康や体力の維持、向上を目指している。
中国政府は近年、若者が体を動かす時間を増やすよう奨励している。元トップアスリートが教える授業はその一環だ。2月に開催される北京冬季五輪に向けて高まるスポーツ熱を生かそうと期待をかけている。
「以前は、スポーツは学生に人気がありませんでした。勉強しなければというプレッシャーで、運動をする時間がなかったのです。でも今ではスポーツの重要性が理解されるようになってきました」とスイさんはAFPに語った。ストレッチとバレエを取り入れたエクササイズが終わったところだ。
体育に力を入れた国の新たな方針では、勉強の時間が減らされ、毎日最低2時間の運動といった目標が導入された。だが、指導者探しに奔走する事態となった。
その結果、以前は進路が限られていた元アスリートにとって、新たな職業の選択肢が生まれた。「以前はみんな、プロアスリートが引退後にできることは、他のプロの指導くらいだと考えていました。でも今は違います」とスイさん。
中国では、スポーツはトップレベルのアスリートだけのもので、それ以外の人にとっては時間の無駄だという認識が根強い。スイさんは自分の使命は一流の選手を含め、アスリートを育成することではなく、そうした認識を打ち砕くことだと考えている。