ジョコビッチ選手の一時収容で見えた難民の窮状 豪
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【1月14日 AFP】オーストラリア・メルボルン市内にあるその建物は、男子テニス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic)選手(34)が滞在している場所には全然見えなかった。薄暗い5階建ての元ホテルで、チェックアウトは許されない。
セルビア出身のスーパースターは、全豪オープン(Australian Open Tennis Tournament 2022)に出場するためにオーストラリアに到着後、ビザ(査証)を取り消され、現在は入国者収容施設として使用されている元ホテルで4夜を過ごした。施設にはテニスコートもプールもなく、外出も禁止されていた。
建物の外には連日、大勢の報道陣とファン、新型コロナワクチンの接種義務化に反対する人々、移民の人権を訴える活動家が詰め掛けた。
しかし、豪政府の厳しい移民政策の下、施設には32人前後が収容されており、中で何年も過ごしている人もいる。
豪裁判所がビザ取り消しの決定を覆し、ジョコビッチ選手は10日、ファンが祝福する中、施設を離れた。
翌朝、建物の外にいたテレビ局の記者はわずか2人。抗議運動をしている人は皆無だった。
ぽつんと残されていた厚紙のプラカードには、こう書かれていた。「ノバクとすべての難民を解放せよ」
数日前までは、施設の壁に落書きをする人や、難民支援のメッセージが書かれた横断幕を建物から掲げる人、歌い踊る人々でにぎわっていた。
抗議運動をする人々の中には、政府が打ち出している厳しい移民制度によって収容されたままになっている人々の状況に関心を集めようとする活動家が少なくとも20人はいた。