■食事にウジ、パンにはカビが

 活動家の一人、キム・マトウシェク(Kim Matousek)氏は、ジョコビッチ選手が収容された初日、テニス界のスーパースターがこうした施設に短期間入れられたことへの関心の高さについて辛辣(しんらつ)な見方を示した。

「こうやってジョコビッチ選手のために抗議しているなんて、ちょっと面白いですね。収容されて1日もたっていないのに」とマトウシェク氏。「私たちの仲間は、収容されて今日で3099日だったかな」

 その頭上で、収容されている男性たちが施設の窓にメッセージを張り出していた。「9年は長過ぎる」。「われわれはあなた方と同じ人間ではないのか」と書かれたものもあった。

 かつてパークホテル(Park Hotel)という名前だった宿泊施設を改装したこの収容施設の悪評が立ったのは、昨年12月。建物内で火災が発生し、死者は出なかったものの、1人が煙を吸い込んで入院した。

 その1週間後、難民認定申請者が施設で出された食事だとする写真をソーシャルメディアに投稿した。ウジが湧き、パンにはカビが生えていた。

 ジョコビッチ選手が収容されたことで、この施設に注目が集まったと、ビクトリア(Victoria)州の難民救済NPO「難民アクション・コレクティブ(Refugee Action Collective)」のデービッド・グランツ(David Glanz)氏は言う。

 一方で、「私たちが懸念するのは、ジョコビッチ選手が賞金額の高い世界的なトーナメントに出場する生活に戻っても、ここにいる男性たちはずっと収容されたままでいることです。多くの人が、政府に9年も拘束されています」と続けた。

 政府は国内外に難民収容所を設置しているが、グランツ氏によれば、元パークホテルに収容されているのも同じく、安全を求めて自国から逃れて来た人々だ。

 収容されている一人、メフディ・アリ(Mehdi Ali)さんは6日、ジョコビッチ選手のファンだと明かす一方で、こう続けた。「メディアは、私たちのことを以前よりは取り上げてくれるようになるでしょう。おそらく世界中で。でも残念です。ジョコビッチ選手がここで数日間過ごすというだけでやっと取り上げてくれるなんて」 (c)AFP/Najma SAMBUL/Mell CHUN