【1月20日 AFP】鮮やかな色とたくさんの花であふれ、祝宴とダンスのお祭り騒ぎとなった花嫁ネフィ・エミンコバ(Nefie Eminkova)さん(21)と新郎のシャバン・キセロフ(Schaban Kiselov)さん(24)の結婚式──。

 だが、ブルガリアの少数派イスラム教徒「ポマク(Pomak)」のネフィさんは、そのどれも見ることができない。

 2人の結婚式は、南部のロドピ(Rhodope)山脈に抱かれた小さなリブノボ(Ribnovo)村で、「冬の結婚式」のしきたりにのっとって執り行われた。この伝統の結婚式は共産主義政権時代に強制的に廃止されたが、1989年の政権崩壊を受けて復活した。

 婚礼は2日間にわたって行われる。豪華な「嫁入り道具」の披露で始まり、新婦の顔に「特別な化粧」を施す2日目の行事で終わる。

 ネフィさんに「特別な化粧」を施したのは、年配の親類女性2人。顔を白く塗り、その上から色とりどりのスパンコールやビーズなどで装飾した。

 イスラム教指導者による祝福の後、新婦は初めて目を開けることが許される。新婦の顔の化粧は、新居に戻ってから新郎がミルクで洗い流す。

 ポマクの人々は、オスマン帝国(Ottoman Empire)時代に強制的にイスラム教に改宗させられたスラブ民族だ。1970年代の共産主義政権時代には、結婚式や割礼儀式とともに華やかな正装をあきらめざるを得なかった。

 今日、ブルガリアには約20万人のポマクの人々が住んでいるが、この伝統的な結婚式が受け継がれているのはリブノボともう一つ別の南部の村だけとなっている。(c)AFP/Nikolay DOYCHINOV