【5月18日 AFP】シリアの首都ダマスカスのレストラン。3歳のアナス・カラート(Anas al-Kharrat)ちゃんは片手を天に上げ、小さな体をくるくる回す。身に着けた裾の長い、白い衣もくるくる回る。

 この旋回舞踊の技は親から子に受け継がれる。並んで踊っているのは、父親のムアイヤッドさん(28)。イスラム教神秘主義スーフィー(Sufi)の舞に、店の観客はくぎ付けだ。「アナスは、言葉より先に体を回すことを覚えました」と明かす。「シリアで最年少のスーフィーの踊り手です」

 スーフィー教徒にとって旋回は、神と交信するための、いわば動く瞑想(めいそう)だ。催眠的な祈りのリズムに合わせ、トランス状態になるまで体を回す。

 イラン、アフガニスタン、トルコで人気を博す旋回舞踊は、精神的・霊的に集中してイスラム教を実践するスーフィーの教義の下で生まれた。確立したのは13世紀のペルシャ語神秘主義詩人ジャラール・ウッディーン・ルーミー(Jalal ud-Din Muhammad Rumi)の信奉者らだ。

 カラート家はダマスカスでも有数の旋回舞踊の継承一族で、その20人の踊り手たちは、イスラム教の神聖な断食月ラマダン(Ramadan)にも舞を演じることが多い。

 ムアイヤッドさんも初めは祖父から踊りを教わった。「スーフィーの教えを大まかに言えば、崇拝と精神的高揚です」と説明する。「旋回は、神へ近づくための方法の一つです」

 ムアイヤッドさんは「軸からほとんどずれることなく」、1分間に何十回も回れると言う。