【1月7日 東方新報】中国人にとって最も重要な春節(旧正月、Lunar New Year)の時期が近づいてきた。今年の春節は2月1日。除夕(旧正月の前夜)の1月31日から2月6日まで1週間の連休となる(1月29日と30日の土日は振り替え出勤)。この期間は家族みんなで一家だんらんの時を過ごすのが伝統。実家を離れた人は遅くとも除夕までに実家へ戻らなければならず、事情があって帰省できない若者は親から「とんだ親不孝者だ!」と責められるほどだ。

 ただ、「民族大移動」といわれるほど多くの国民が動くだけに、移動手段の主流である高速鉄道などの鉄道切符の入手が一苦労となっている。日本よりチケットレス化が進む中国では鉄道会社の公式アプリ「鉄路12306」で切符を予約することが多いが、予約受け付け開始と同時に申し込みが殺到し、なかなか入手ができない。そこで近年は民間旅行会社が独自に予約購入代行アプリを開発。利用者は予約したい列車名と個人情報をアプリに入力しておけば、ネットワーク技術で自動的に予約申し込みを繰り返してくれる。

 業界関係者は「人間ではいくら頑張っても、1秒置きに鉄路12306の情報を更新してチェックするのが限界。ネット技術は1000分の1秒単位で更新を繰り返すので、切符がゲットしやすい」と説明する。更新スピードも「高速」「極速」「光速」などの差があり、手数料は20~80元(約364~1457円)程度が主流だ。必ずしも切符が入手できるとは限らないが、通常よりは成功率が高いといわれ、複数のアプリに同時並行に申し込む人も多い。

 しかし、最近はこうした代行アプリの問題点も浮上している。鉄道会社は「代行アプリ専用の切符枠があるわけでもなく、結局は代行アプリを使っても鉄路12306の予約開始日からしか受け付けない」と説明する。また、1000分の1秒単位の申し込みがある場合、「異常アクセス」とみなし、申し込みを制限する場合もある。このため、「代行アプリを使っても切符が取れなかったのに、鉄路12306で普通に申し込んだら簡単に切符が取れた」というケースも。さらに、代行アプリとのキャンセル料の返済トラブルや個人情報の漏えい、パソコンのウイルス感染というリスクも指摘されている。

 中国の流行語で「智商税(IQ税)」という言葉がある。知識が乏しいまま効果が誇張された買い物や投資に手を出して損をする「お勉強代」「無知の代価」という意味で、「切符の代行アプリを使うのは智商税を払うだけ」という冷ややかな声がある。一方で、「代行アプリを使ったら一瞬で切符が取れた」「鉄路12306の画面と長時間にらめっこせずに済んだ」という人が多いのも事実。今年も春節に向けて悲喜こもごもの切符争奪戦が繰り広げられそうだ。(c)東方新報/AFPBB News